朝、新聞を読みながら軽めの食事を済ませ、コーヒーを片手に寛いでいると、出し抜けに家内が最近出来た”道の駅”に一緒に行かないか?と聞いてきた。
実は家内は結構な方向音痴で、初めての場所へ行くのはチョット苦手。
カーナビに頼れば行くことも可能だが、それよりも小生を誘った方が面倒もなく何より手っ取り早いと云う訳だ。
まずは所用を済ませて10時半過ぎに居宅を出た。
山県市の東海環状自動車道IC近くに出来た道の駅に着くと、30台ほど停められる駐車場は既に満杯でかなり盛況の様子。
「みんな何を買いに来ているのかな?」と興味を覚えながら入店する。
家内はブドウと富有柿、小生は利平栗の良い出物が有ったらと思って来たのだが、店内にあるのは意に反して土産物ばかりで、産直の農産物はほんの少ししか無く、おまけにブドウと栗は一品も無く、柿も品種表示のないものが数袋だけ。
「こりゃあダメだ!」と忽ちの内に購買意欲は霧散霧消し、ただ漫然と土産物を見廻すのみだった。
こんな事なら産直農産物が数多くある”おん菜市場”or大野町の道の駅に行けば良かったとチョットがっかりしながら即刻店を出た。
「仕方ないなぁ帰ろう」と車を走らせること数分、不意にある考えが頭に浮かんだ。
「折角此処まで来たから五平餅でも食べて帰るか?」と家内に告げ、ハンドルを其方の方角へと切る。
行先は”かさ神さん”の前にある岩井屋で、此処からなら8km足らずの距離だから10数分あれば着く。
丁度昼めし時なので混んでるかと思った岩井屋は比較的空いていた。
座敷に上がって席に着くなりメニューを眺めるが、実は見るまでもなく既に注文する品は決まっている。
豆腐田楽と里芋田楽それに五平餅と菜めし、これが毎回のお決まりで、此処に来るようになって40年ほどになるが、これ以外のものは頼んだ事が無いのだ。
思えばこの店の古びた佇まいも、向かいの ”かさ神さん:岩井山延算寺東院” の侘びた 雰囲気も昔から何ら変わっていない。
何もかもが慌ただしく移り変わる時代にあって、10年1日の如く遅々として変わることのないものに、ある種の安らぎを覚えるのは小生の感傷なのだろうか?
そう云えば、この田楽の味も五平餅の味も昔からまったく変わってないなぁ・・・。
田楽と五平餅で腹を満たした後は”かさ神さん”へと向かう。
空海が開いたというこの寺の本尊は薬師如来(別名:瘡神薬師)で、古来から疱疹などの皮膚病にご利益があるといわれ、あの小野小町が天然痘を患ってその治癒祈願に此処を訪れた際、7日間のお籠りと霊水で瘡が跡形もなく消えたと云う伝承が残っている。
世界3大美人の一人である小野小町の美貌も ”かさ神さん” のご利益があったればこそとなると、つい手を合わせて色々お願いしたくなるのも人情か?
小生も手術箇所の早期完治をお願いするため、石段を上がって奥まった場所の本堂まで行き、神妙?に手を合わせてきた。
小生の場合は皮膚病では無いけれど ”衆生の病苦を救う” のが薬師如来の務め?なので まぁ大目に見て貰えるだろう。
境内のモミジは少し色付き始めているが、此処から離れた場所(山の中腹)にある本院の方はどうだろう?
「チョット寄り道をして」と思ったが、居宅では老犬が1匹小生らを待っているので、やっぱりこのまま帰ることにした。
あと30分ほどかかるが、昼寝をしながら待っててくれよぉ・・・。