風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

郡上八幡久し振り

 

♪夏になると思い出す遥かな尾瀬遠い空~♪

若い頃(今から40年以上も前)は、この時期になると山仲間を誘って3泊4日ほどの山旅(縦走)をするのが愉しみだった。

行先は主に北アルプス南アルプスで、数日間を山中で過ごすと最終日は下山して日常の生活に戻るのがとても残念に思えたものだ。

唐松岳の雄姿(北アルプス後立山連峰

山歩きは本当に楽しい遊び?だがその遊びは危険と隣り合わせでもある。

30数年の山歩きキャリアの中では、登山中に不測の落石に当たってケガした人を幾人も見てきたし、どこそこで人が滑落したとの報も何度も耳にした。

恥ずかしながら小生も雪渓を数十m滑落したことがあり、その時は指の爪を剥がすケガで済んだが、一歩間違えば大怪我を負っていたかも知れないと思う。

夏の山では雷も怖い。

とある夏に笠ヶ岳双六岳槍ヶ岳へと縦走した時のこと、双六小屋の手前で雷に遭遇した。

雷鳴はどんどん近づいてくるが山小屋まではまだ1kmほどもあり、身を隠す岩とてない稜線上を行く恐怖をひしひしと感じながら小走り気味に歩を進める。

やがてポツリポツリと雨が降り出し”万事休す”次第に強くなる雨と響き渡る雷鳴の中を全速力で走って何とか山小屋へと飛び込み事なきを得た。

その夜食堂で友人と談笑しながら寛いでいると、全身ずぶ濡れで疲労困憊といった様子登山者が1人入ってきた。

山小屋の主人との会話に聞き耳を立てると、どうやら双六谷にイワナ釣りに入って道に迷ったらしく、戻り道を求めて数時間谷筋を彷徨い歩き辺りが暗くなった頃にようやくここにたどり着けたとのこと。

そう話す彼の頬には明らかに雨のしずくとは違うもの(多分安堵の涙?)が一筋伝っていた。

悪天候などで道に迷った挙句遭難する危険度も高い山になるほど増す・・・。

 

さて今日は涼しさを求めて郡上八幡への長良川遡上ライド。

岐阜から郡上を往復すると走行距離は約140km、小生の通常のライド時間内(最長で 5時間)では走るだけ(つまらないし必死の脚力が必要)になってしまうので、いつも走る美濃までは輪行することにした。

 

小倉公園の木陰に車を停めバイクを手早く準備して出発。

R-156は路側帯が狭く車の通行量も多いので自転車の走路としては不適、多少遠回りでも長良川沿いの抜け道を走る方が安全だし林間の道は涼しくて気分も上がる。

長良川に沿って走るR-156の抜け道(美並町大原付近)

この道はその昔スキーに熱を上げていた頃に道路渋滞の迂回路として頻繁に走ったが、当時と変わらないところも大きく変わったところもあるので「そうだこうだった」とか「あれっこうなったのか」と記憶と実像を対照しながら走るのも結構愉しい。

 

みなみ子宝温泉郡上八幡までの道半ばなので線路脇にバイクを停めチョット一休み。

長良川鉄道みなみ子宝温泉駅(駅舎の奥が温泉施設)

ここは長良川鉄道の駅舎が温泉施設に直結している一風変わった日帰り温泉で、お湯は弱アルカリ性単純泉と小生好みの”ぬるり”泉質。

露天風呂にノンビリ浸かっていきたいところだが、ここで浪費?する時間は元より無いのでまたの機会にしようと諦めて先へ進むことにしたが「あぁ残念だなぁ」との思いに無い後ろ髪?が引かれた。

 

美並の手前で走路を右岸側に替え幅広になった道を快調に走っていると、何やら川から歓声が聞こえてきた。

激流に揉まれて進むラフティングボート

視線をそちらに投げると丁度ゴムボートが激流を下っている最中で「ラフティングかぁ面白そうだな」と興味深々にしばらく眺めた。

昔は川遊びと云えば泳ぐか魚釣り位しか無かったが、今では色んなアクティビティーがあって「ある意味好い世の中になったなぁ」と独り納得。

この夏休みに東京から孫達が遊びに来るので「連れてきてやるかぁ」と決めた。

 

川に沿って線路と道が並走するようになると郡上八幡は近い、その安心感が脚力に作用したか?軽くなったクランクを軽快に回して街中へと急いだ。

レトロな雰囲気を残す郡上八幡駅にちょっと寄り道

郡上八幡を訪れるのは何年振りだろう?記憶にないほど昔のことだが、何故か町並みは以前とほとんど変わって無いような気がする。

例年8月の盂蘭盆会に徹夜踊りの会場となる新町や昔ながらの古い町屋が残る鍛治屋町職人町をバイクを牽いてゆっくり愛でながら周遊した後は、小高い八幡山上に建つお城に向かってプチヒルクライム

街中を流れる清流吉田川(前日の雨で少し濁っており残念)

ひと汗かいて辿り着いた郡上八幡城には懐かしい思い出がある。

後年才能が無いと自覚して絵道具は全部捨てたが、小生は中学では美術部員だった。

顧問は西垣先生という定年真近のおばあちゃん(と当時は思っていた)で、その先生の引率で夏休みに写生旅行に来たのがこのお城。

あの頃は家族での旅行や遠出さえ数少ない時代だったので、郡上八幡という未知の地を訪ねるワクワク感に妙に胸が躍った記憶がある。

岐阜乗合(当時)の路線バスに揺られて来たことや高塀ごしの天守を写生したこと等が少しキツイところもあった西垣先生の笑顔と共に鮮明に思い出されるが、果たしてこの記憶どこまで正しいのやら?

城下町郡上八幡は山あいの情緒あふれる街

城山を下ったらそのまま帰途につくつもりだったが、何だか走りが物足りない気がして郡上大和まで足を伸ばすことにした。

往復20kmほどで時間にすれば40分弱「まぁ自己満足のためだからこんなもんかぁ」と独り呟いてペダルを踏む脚に力を込めた。

風を切って走るその感触が何とも気持ち好い・・・。