米国に住む長女からLINEのビデオ通話着信があり、何事か出ると孫2人が眠そうな顔をしてこっちを見ていた。
日本時間はAM10時だが向こうはPM8時、まだ寝るには早いので「どうかしたの?」と聞くと、連日の猛暑(40℃が続いてる)で少しバテ気味との事。
「アパートのプール(居住者専用)で泳げば?」と言うと、給水設備が壊れていて使えないとの返事で ”何ともお気の毒様” というしかない。
それでもキンダーガーテンには2人共毎日楽しく通っている様で、英語での会話も随分と出来るようになり、時々送られてくる学校での授業風景(動画や写真)を見ながら、「子供の適応能力って大したもんだ」といつも感心している。
一方長女の今の関心事は円安で「どうなってるの?」と少し怒声で聞いてきた。(俺に怒って貰ってもねぇ・・・)
大学研究所でポスドクとして働く長女の年収は6万ドルほどだが、そこから税金などを差し引くと実質手取りは5万ドルを切る。
物価高の米国で家族4人が暮らすにはこれでは足りないため、渡米以来預金を取り崩して補填しているらしいが、円からドルへの換金時に為替レートが悪ければ預金の目減りも増えるので円安を怒るのも当然。
相変わらず政府、財界、アナリストの一部からは円安を是認する声が聞こえるが、反対に生活者からは相次ぐ値上げラッシュにこの円安を危惧する声も高まっている。
しかし、安倍長期政権から続く異次元金融緩和で負の遺産(放漫財政による1,000兆円の借金)を抱える政府と金融当局に現状を打開する妙手は無く、徒手空拳のまゝに欧米の金融政策にただ押し流されるだけ。
いやはや、かって”Japan as Number One”と世界に誇った経済力も今や見る影も無しの様態で、小生ら年寄りにはこの国の将来が大いに危ぶまれるのだが、次代を担う若い 世代は現在の政治経済情況がどの様に見えてるのだろうか?・・・。
さて、今日は雲間から青空が覗く天気なので、遠くよりも近場でと一旦は木曽川サイクリングロードへと向かったのだが、何だかイマイチ乗り気になれず2週間ほど前に行きそびれた不破の滝へと途中で行先変更した。
墨俣から神戸⇒赤坂へと車通りの少ない道を選んで西に向かって走る。
この時期にしては珍しくチョット強めの西風が吹いてスピードが上がら無いが「往路の向かい風は復路の追い風」と自分をなだめてクランクを回し続けると、風神も気の毒に思ったか?幾分か風も弱まってきて走るのが少し楽になった気がする。
「OKOKいい感じ、風よこのまま弱まっててくれよ」と独り言を呟いた・・・。
垂井からは北に進路を取り前回確認した川沿いの道を山の方へと進む。
この道を奥に詰めたところが目的の”不破の滝”で「あと3kmほど走れば到着だ」と自然にペダルを踏む脚に力が入る。
しかし三叉路まで来て右方向の山道へ進もうとすると、何と道がロープで塞がれており不吉な予感が頭をよぎった「まさか滝へは行けない・・・」
滝までは残り1.5kmほど、とにかく行ける所まで行ってみようと走り出すが、山道は少々荒れており小石や木片を踏んでパンクしない様に注意しながらの徐行だ。
斜度は2~4%とキツく無く、ユックリ走るので辺りを観回しながら行けるのは嬉しい。
しばらく行くと川辺で釣り糸を垂れる人影を発見し「この辺りだとアマゴ釣りだな」と独り納得。
釣り人と云うのは思いがけない場所にも居るもので、小生がまだ山歩きに勤しんでいた頃に砂防堰堤が幾つもある渓流上部で釣り人に出くわしたこともある。
ウナギなら堰堤を這って上がるが魚は無理、あんな所にイワナが居たとは思えないが、もし居たとしたらそれは堰堤が造成される前から居たイワナの子孫だろう・・・。
そんなことを想いながら山道をさらに奥へと進んだ。
すると、それまで川の瀬々らぐ音しかなかった静かな空間を断ち切る様にして異音が耳に届き、その音の方(前方)に視線を送ると、幾本もの倒木とそれを片付ける重機が道を塞いでいるのが眼に入り愕然となった。
「これがあのロープの理由かぁ」
滝まであとわずか(Google Mapで確認すると200mほど)だが、この状況では前に進めないのは明らか。
滝のある辺りを呆然と眺めたあと仕方なく諦めてバイクを反転させたが、つい口から「何かついてないなぁ」の声が漏れた。
このまま帰るのも味気ないので次の行先を頭の中で模索すると赤坂の”金生山”が脳裡に浮かんだ。
金生山は標高217mの小山だが、そこを上る距離1.13km平均勾配13%(最大勾配23%)のヒルクライムは激坂として有名。
ヒルクライム嫌いの小生ではあるが過去に1度挑戦しており、その時は敢え無く中盤?で力尽きているので今日はどこまで上れるか「力試ししてみるかぁ」と思った次第。
赤坂の大通りに面した路地を山側に曲がった先の子安神社がスタート地点で、いきなり12~21%の急登が始まる。
50mほどの坂をダンシングを交えながら上がり、一旦緩んだ斜面でホッと息をつく間もなく次の上りが始まってまた脚に力が入る。
今度は12~18%で200mほど続く坂をユックリ上るが、それでも息が上がり腿も次第に張ってくるので少し蛇行気味にしていると、前方から車が1台下りてきて徐行することもなく横を通り抜けていった。
幅員の狭い道なので小生との距離はもう触れんばかり、転倒しそうになり「危ない!」と思わず声が出たが、それにしてもドライバーさん「もう少し自転車乗りのことも考えてよ」と独り愚痴った。
金生山神社まで来ると斜度も緩み少し楽が出来るが、前回はここでギブアップしておりこの先は未知数「何とか行けそうだな」と自己暗示をかけて先へと進む。
実は金生山ヒルクライムはここからが正念場、14~23%で500mほど続く坂をひたすら上がらなければならない。
眼前には進むに従って斜度を上げる坂がありそれを見て一瞬ひるむが、もうここは行くしかないと腹を決めて助走をつける様に少し加速した。
キツイとにかくキツイ、斜度は18~20%でダンシングに蛇行を加えないと上がっていけない。
脚はそろそろ限界で、心拍も呼吸も急に上がって”謎の疲労感”の恐怖が頭をよぎる。
あそこまでと目標にしていた地蔵堂はなんとか通過したものの、その先の22%の急坂に差し掛かった所でついに力尽きてギブアップを余儀なくされた。
バイクを押し歩きして20mほど先の緩斜面まで行くと、その先にはまだまだ続く急坂があった。
「何て坂だ、やっぱりここは俺の来る所じゃぁ無いなぁ」と苦笑いしたが、その笑いには少なからずの満足感も含まれていた。
バイクを押して急坂(130m)を上がり、最後くらいはバイクでと緩くなった坂を150mほど走ればゴールの明星輪寺の駐車場、折角なのでお寺も訪ねることにした。
結構大きなお寺で平日にも関わらず参拝者がチラホラ、奥まった処にある本堂まで行きご本尊の虚空蔵菩薩(日本3大虚空蔵菩薩の一つらしい)に家族の安寧をお願いしておいた。
下りは急坂なのでブレーキをかけっぱなし、幸いバイクはLapierre(アルミホイールにリムブレーキ)なのでホイールが熱損する心配は無いが、ブレーキの高鳴りが少し気になる。
ここは濃尾平野が一望できる絶景pointなので、上り時には見れなかった景色を十分堪能してから下りることにした。
後は帰るだけだからね・・・。