風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

”そらふさがり”まで行ける?

 

会社勤めをしていた時の同僚から飲み会の誘いがあった。

COVID-19の発生から3年近くなるが、隠忍自重を強いていた世間の風潮も、最近では 様変わりしてきたので「そろそろ良いかな」という訳で、以前から続けていた”恒例の飲み会”の再開と相成った次第だ。

集まったのは現役やOBの6人。

いつもは10人ほど集まるのだが、1週間前の連絡だったので都合を付けられなかった人が何人か居たらしい。(と言うことは参加者は小生も含めて”暇人”か?)

乾杯のあとは酒を酌み交わしながら各人の近況報告。

やはり3年の月日はそれぞれの人生に何らかの変化をもたらすもので、平々凡々な生活の様でいても実は案外そうでは無い、笑いや相槌を交えながら楽しく聞かせて貰った。

会社の近況や知人の消息もこの3年で生じた情報blankを埋める貴重なpiece。

小生がE社をリタイヤして随分経つのに、今でもそこに帰属意識を持つなんて可笑しな話だが、それが長年一つの会社に勤め続けた人間の性なのかも?。

飲んで食べて話をしての楽しい2時間半はあっという間に過ぎ、久々の飲み会は定刻を少し過ぎて”お開き”「次回は年末にやりましょう」と約して帰路についた。

それにしても好い気になってちょっとビールを飲み過ぎた感じ、二日酔いにならなきゃいいけど・・・。

 

さて今日のライドでは七宗の”そらふさがり”を訪ねるが、居宅からだと往復130km超となって小生の通常のライド時間に収まらないので、輪行で関の百年公園まで行ってそこからスタートすることにした。

この輪行で50kmほど走行距離を短縮出来るので、門限?のPM3時までには何とか帰宅できる筈だ。

 

9時過ぎにスタートしてまずは関の街中を貫けて富加へと走る。

少し肌寒い気温と山越えの北風の相乗効果か?何だか走りが重い感じがするので、身体を温めようとケイデンスを上げ気味にしたら、しばらくして身体全体を包む様な疲労感が押し寄せてきた。

3年前に突然始まったこの症状だが、最近はその発症頻度が増えてきた様で、急加速や急坂で呼吸が乱れたり心拍数が上がったりすると、必ずと言っていい位に頻発する様になった。

老化による心肺機能の衰えなら仕方ないけど心臓疾患が原因ならチョット困る。

「やっぱり一度診て貰うかなぁ」と思いながらケイデンスを落とした。

 

40分ほど走っただけでまだ休憩には早すぎるが、この疲労感を治めるには一旦停まるのが最善なので「此処なら清水寺か」と近くの山寺の方向へとハンドルを切った。

清水寺は加治田山麓にある古寺(京都の清水寺と同じく坂上田村麻呂が開祖)で、その静かな佇まいが小生には好ましいところ。

持国天増長天(仏法守護四天王のうちの二天)が睨みを利かす仁王門をくぐって山中の本堂へと続く長い階段をゆっくり上がっていくと、渓流のせせらぎと木洩れ陽の微かな揺らめきが、静寂な雰囲気を醸し出して小生を心地良い気分で包んでくれる。

人影のない本堂の片隅に腰を下ろし、周りの景色をぼんやり眺めながら束の間の安息を愉しんだ。

山懐に抱かれて建つ清水寺の仁王門
増長天     仁王門を護る二天像     持国天
本堂へと続く心休まる山中の道

本堂のご本尊”十一面観世音菩薩坐像”は国指定重要文化財(御開帳は1回/年だけ)

r-80との分岐を過ぎて川浦川に沿って点在する人家が途切れると、間見峠への長い上りが始まる。

またあの”耐えられない様な疲労感”に襲われるのは嫌なので、呼吸と心拍を上げない様いつもより早めに軽いギアを選択してスローペースで上がることにした。

始めは緩い傾斜も走るに連れて徐々に斜度が上がり脚も少し張ってくるがまだ大丈夫。昼なお暗き木立茂る山道で黙々とペダルを踏んでクランクを回し続けると、視線の先に九十九折れが見えてきた。

ここまで来ると峠までは残り1/3、この先は傾斜も緩むので今のペースでいけば疲労感に襲われることなく乗り切れそうだ。

木立縫う山道を間見峠へと走る

九十九折れまで上がってくるとホッと一息つける

間見峠を越えると七宗の室兼林道分岐までの11kmほどは下り基調の道、これまで上りで失った時間を少しでも取り戻すべく快速で飛ばす。

風を切りながら走る爽快感はロードバイクの醍醐味だが、山道では角ばった石や木片、濡れた路面が走りを邪魔するので注意も必要。

「こんな所で事故ったら大変だなぁ」そんなことを考えながらも先を急いだ・・・。

 

七宗町落合でr-64と別れると”そらふさがり”まではあと少し。

「あの橋を渡れば室兼林道入口」と視線を前方に投げると何やら看板と柵らしきものが見える。

「えっもしかして・・・」不安を覚えながら近付くとやっぱり通行止めだった。

「ここまで来て通行止めかぁ」とやり切れない思いで傍にいたガードマンのおじさんに

「”そらふさがり”までだけど行けませんか?」と聞くと「橋の点検だから何とも言えないなぁ」との返事。

困った表情でいると、気の毒に思ったか?おじさんは「行けるとこまで行ってダメなら戻ってきてください」と先に進むのを許してくれた。

「有難う助かります」おじさんに感謝の言葉を告げて室兼林道に乗り入れた。

室兼林道を奥に詰めたところに ”そらふさがり” がある

林道を1.7kmほど進むが橋の点検をしている様子が無いので「これは ”そらふさがり”  までいけるかも」と希望的に思った矢先、目の前に道路を塞ぐ工事車両が現れた。

「ここまでかぁ、あと200mも無いのに・・・」呆然自失の体で工事車両を眺めていると、眼前に停まっていたバンから若い現場監督が降りてきて「申し訳ないけど行けないんです」と小生に告げた。

「仕方ない帰るか」とバイクを反転させようとすると、思いがけなく「自転車ではダメだけど歩いてなら良いですよ」と呼びかける声が聞こえてきた。

何という幸運だろう、ガードマンだけでなく若い現場監督までもが先に進むのを許してくれるとは。

早速路傍の窪みにバイクを預け、現場監督と作業員の面々に「有難う」と伝えてから、人の親切に感謝しつつ”そらふさがり”へと向かった。

工事車両の脇を通り抜けて”そらふさがり”へと向かう

岩壁が空を塞ぐ様に迫り出している事から”そらふさがり”と名付けられた隘路
昼なお暗い”そらふさがり”           道脇には清澄な渓流が

帰路はr-58をメインに走ることにした。

此処から北条峠までは多少updownがあるが、峠から先は中之保まで長い下り道が続くのでどうしてもだらける帰路の走りには助かる。

路面状態はそこそこ良いので快調に飛ばすとあっという間(単にそんな気がしただけで実際はそれなりの時間がかかった)に”道の駅平成”に到着。

トイレ休憩しようと最近結構ある様になったサイクルラックを探すが、見る限り何処にも無い・・・と思ったら観光案内所らしき建物の裏に隠す様にしてそれはあった。

「こんな所じゃ誰も使わないよぉ」と思わず不満が漏れる。

現に先着していたローディー2人はバイクを売店建物の石垣に立てかけていた。

折角用意した設備なんだから置き場をもっと考えて欲しいもんだ・・・。

サイクルラックは使える場所にあってこそ重宝するんだけど・・・

デポ地の百年公園まであと20kmほどでゆっくり走っても1時間とはかからない。

r-58は車(特にトラック)の通行量が多いので津保川対岸の抜け道を走る方が安全。

ちょっと時間はかかるが身を守るのを優先して走路を変えることにした・・・。