長良川左岸堤防道路を南下していくと、やがて道は木曽川右岸堤防道路と合流する。
そこから南へ約10㎞、木曽川と長良川を左右に隔てて立田大橋西詰まで続く堤防が 木曽長良背割堤である。
この細長い堤防にも道路が伸びているが、国交省の河川管理道路のために自動車等の 一般車両はゲートで遮られて中に入ることが出来ない。
しかしロードバイク等の二輪車はゲート脇の開口を通って入ることが出来て規制もされてないことから、休日ともなると近郊のローディーが大勢走りを楽しみに来る。
なんと言っても、10㎞ほどのほゞ平坦な道を背後から忍び寄る車に注意する必要も なく自由に走れる解放感は快適そのものだ。
小生も7回に1回ぐらいの頻度でここを走って長島や桑名辺りへの周遊ライドをするのが常だ。
実はこの背割堤の道路だが、全線舗装された道を最初にロードバイクで走ったのは、 多分小生ではないかと思う。
そのあらましはこうだ。
9年ほど前、ロードバイク初心者の小生は近所の長良川河川敷道路での練習走行を卒業し、半径30㎞圏で安全に且つ楽しく走れるルートを探していた。
そしてある日、長良川左岸堤防を南下してみようと思い立ちロードバイクを走らせた 結果、冒頭の長良川と木曽川の堤防道路が合流する場所へと至った訳だ。
その時、偶然にも背割堤では道路の舗装が始まったばかりで、車止めゲートから数百m先では正にその工事が進行中であった。
次に訪れた時、道路の舗装は東海大橋辺りまで伸びていた。(当時はまだ会社勤めの身で土・日だけが自転車で出かけられる日だった・・・)
その次の時は工事車両や作業員の姿は視界には無く、ゲート脇を抜けて東海大橋の先 まで行くと、滑空場(背割堤の木曽川側河川敷にグライダー滑空場がある)の北端辺りで工事をしているのが見えた。
こうして道路の舗装は徐々に南へと伸びていった。
背割堤を訪れる度に舗装が先に進んでいることもあれば同じところで止まっていることもあった。
やがて舗装工事は立田大橋西詰まで残り1㎞ほどを残す位置(長良川側法面に松が1本立つ所)で止まり、長い期間(数ヶ月と思うが記憶は定かではない)再開されなかった。
ここまで来れば木曽三川公園は指呼の距離であるが、そこに至るには未舗装の土と石と雑草に覆われた道を1㎞弱も走らねばならない。
乗り心地は当然ゴトゴトと悪いし、尖った石を踏んでタイヤ切傷パンク(他所で一度 経験した)の恐れもある。
そんな訳で、舗装工事の早期再開を願いながら止む無くその悪路を走ること幾たびか。
しかし、ついにその時が来た。
「仕方ないから今日も悪路を走って三川公園まで行こう」と思いながら件の1本松まで来ると、何とそこから始まる筈の悪路はすでに無く綺麗な舗装が先へと続いていた。
視線を前方に送ると、随分と先に工事車両が数台停まっており作業員も数名いるのが 見えるが、どうやら舗装工事はほゞ完了しているらしかった。
ロードバイクを進め、工事車両近くにいた作業員に目くばせで「通って良いか」と聞くとOKの合図が返ってきた。
遠慮がちに工事車両の脇を通り抜けて立田大橋側(愛知県)の車止めゲートまで一気に走ると、思わず笑いが込み上げてきた。
「バンザイあのガタガタ道は無くなった、これからは気軽にこの道を走れるぞ。」
こうして、奇しくも舗装工事が全線完了した直後に、小生が背割堤を走り抜けることになった訳である。
舗装工事が完了して1年ぐらいは背割堤でローディーを見かけることは稀で、多くて 往復する間に2人か3人と行きかって挨拶する程度だった。
その頃この「人知れずのサイクリングロード」を走る時には、誰もが知らない秘密を 自分は知ってるんだという優越感さえ感じながら走ったものだが、しかし、目聡いローディーがこんな良い走り場所をいつまでも見逃しておく筈が無い。
年月を経ると共に背割堤を走る人の数は増えていき、今では近在のローディーの誰もが知ってる絶好のバイクRoadとなった・・・。
さて、今日は休日なので行き交うローディーの数も多い。
手で挨拶を送りながら風に包まれ走っていると、背後から来たTTバイクの男性が疾風の如く小生を抜き去っていった。
「あぁ若いっていいなぁ・・・。」