風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

Tour of Japan 美濃コース

開催が危ぶまれていたTour de France は、何とか開催の運びとなり連日熱戦が繰り広げられているが、毎年5月に全国各地を転戦して開催されていたTour of Japanは、COVID-19のためにやむなく中止になった。

今年は5月20日に美濃ステージの予定で、観戦を楽しみに待っていたので残念だったが、致し方ない仕儀だと思う。

美濃市は小生の住む岐阜市からは長良川沿いをさかのぼって32㎞ほどの距離。

山間に拓けた街であり、ロードバイクで走るのに適した川沿いや山辺の道が何本も在る事から、ここを経由する小生お気に入りのライディングコースが幾つかある。

今日走るのはその一つで、Tour of Japan美濃ステージのコースを追体験するライドだ。

 

La Pierreのタイヤに空気を入れ西方の空を見る。

天気と風を確認するのが小生の出掛ける前のルーティンで、今日もまあまあと安心して出発する。

街中を抜けて長良川に到ると、ここからは河川敷に設けられた管理道路(小生は長良川左岸サイクリングロードと勝手に命名)を走って上流の長良橋を目指すが、平日のサイクリングロードは日課?としてここを走るローディー2~3人とすれ違うだけの閑静な道、そこを朝っぱらから高いケイデンス(足が回る様にするのが目的だ)でバイクを走らす小生の姿は少し奇異に映るかもしれない。

長良橋から先も藍川橋までは基本長良川左岸堤防に沿って行くが、この区間の堤防道路は車の交通量が多い割には道幅が狭いため路側帯は危険で走れない。

車道と隔てられた幅広の歩道を走り、それが無いところは住宅街の脇道へと迂回するのが小生の鉄則だ。

そんな迂回路途中の開けた場所にある一軒の喫茶店らしい建物、いつ前を通っても準備中の札があるので、てっきり休業した喫茶店と思っていた。

ある日TVでニュース番組の特集を何気に見ていると、オオクワガタなどの希少昆虫を採集して販売している男性が紹介され、店はそんな昆虫がとれる夏場の一時期だけ開くという。

夏の稼ぎで1年暮らすなんて羨ましいと思いながら画面に見入ると、何とそこにはあのいつも準備中の喫茶店?が映し出されていた。

今日も店の前には準備中の立て札、今年は長雨のあとの猛暑だったが珍しい昆虫は沢山採集出来ただろうか・・・。

藍川橋の先、津保川に架かる橋を左に折れると車の交通量は減るのでここからは路側帯を走っても大丈夫。

弱いながらも追い風を受けて軽快に走り、長良川に架かる千疋橋を渡って進路を右に とる。

ここから路面は少し悪くなる(脇見していて陥没を通過しパンクした事がある)が美濃へ抜ける近道なので小生はいつも通るが、実は休日でもほゞローディーを見かけない人知れずの道だ。

やがて道は長良川から一旦離れ小高い峠を2つ越えてまた長良川に戻るとTour of Japan美濃ステージのコースまではあと少し、今日は藍川団地南の交差点からコースに入る事にした。

ここは、坂を高速で下ってきた選手が右直角にコースを曲がるレース時の見所ポイントの一つで、レース観戦時あっという間にコーナーを駆け抜けて視界から遠ざかる選手の姿にさすがプロは違うと感心したものである。

さて、居宅を出てから30㎞超の距離を走ってきたので、交差点角のローソンでトイレを借りがてらの休憩をとることにしょう。

直線の道を西に2㎞辿って市場交差点を右に曲がるとコースは大矢田トンネルに向けての登りとなる。

3~5%の緩い斜度が2㎞程続いて徐々に高度を上げていくが、正面の山が近づいて 半道坂が始まるといよいよ本格的なヒルクライムだ。

インナーローのギアで九十九折れを喘ぎながら登って、前方にトンネルの暗い開口を 目に捉えれば苦しい時間はもうすぐ終わる。

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大矢田トンネル(照明が少なく暗い)

トンネルに入る手前がレース時の山岳賞ポイント。

ポイントを狙う選手が競い合う所だが、小生もそれに倣って「あとチョットだ頑張れ!」と自分自身を激励する。

トンネルを抜けると道は板取川に架かる睦橋に向かって約2㎞を下る。

レースでは各選手が80km/h以上のスピードで駆け下っていくところだが、深いカーブや道幅が狭いところもあり、小生は安全重視のブレーキングでスピードを45km/h以下に抑えながら恐々と下っていくのが常だ。

睦橋を右折し和紙の里街道に出ると視界も開けて大らかな気持ちになる。

両手をいっぱいに広げて走りたい気分だ。

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睦橋から美濃和紙の里会館方面の眺望

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ゴールスプリントが繰り広げられる会館前の直線

美濃和紙の里会館を過ぎた先の橋を対岸に渡って川沿いを東進すると路肩に小さな水場がある。

夏場の暑い日にはここでチョット休憩し、山から引いた清水で汗を流してのどを潤すのがライド中の楽しみの一つだ。

今日は水場には寄らず和紙の里街道をそのまま東進。

板取川の清い流れに時々目をやりながら軽快にペダルを回すと身体を包む風が本当に 心地いい。

長瀬の少し長い下り坂を経て長良川沿いの道に入ると、路面の状態が悪くなるし路側帯も狭いので注意が必要だ。

最近はハイブリット車が多く後方から近づく車に気付かない時もあるので、注意しながら路側帯の白線に沿って走る。

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美濃橋(1916年完成の現存する日本最古の近代的吊り橋)

美濃橋まで来ると美濃ステージコース21.3㎞/周の6/7を走り終えて残り3㎞。

それにしてもプロの選手はこの1周を30分前後で走るが小生の場合50分は必要だ。

改めてプロの脚力はすごいと思う・・・。

スタート地点まで戻ってきたが一休みするほど疲れてないのでそのまま帰る事にした。

帰りルートは幾つもあるが、今日はr94を長良橋まで辿るルート。

車の交通量が少し多いが、スピードを出して走れるので往路に比べ居宅まで戻る時間が短縮できるのだ。

1時間前に通った道を市場交差点に向けて走り今度は左折するが、常時左折可なので 右後方からの車に注意しながら素早く曲がる。

ここから2㎞ほどは緩い下りで、ペダルを踏む足に力を込めて回せばスピードは40km/hを超える。

スピードに乗り更に1段ギアを上げようとしていた時、後方から近づいた大型トラックがエンジン音を大きく響かせてすぐ近くを追い越していった。

その時「車通りの多いこの道でパンクしてバランスを崩し転倒したら・・・」との思いがフッと脳裏に浮かび、ハンドルを握る手と肩に思わず力が入る。

自重を自らに言い聞かせ淡々とペダルを漕ぐと、束の間の興奮状態は次第に遠のいて 平常心に戻っていくのがわかる。

こんな感じで車と並走することによって生じる緊張と弛緩を繰り返しながらr94を南下する走りは続くが、藍川橋を越え長良古津で側道に自転車道が現れるに及んでようやくその走りも終わる。

解放された気分で走っていると、鵜飼大橋の白い塔柱と背後の青黒い金華山が眼前に 大きく迫ってくる。

あの山の麓の小さな公園で最後の休憩をとる事に決めた。

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長良川畔の小さな公園で休憩