小生の場合、朝起きて窓から外を見た時、天気の具合が悪くなければ「今日はどこへ 行こうかな」と考えたりするのが常だ。
以前はそれほど思案することなく行先が決められたが、最近はなかなか決まらない。
それは、時間的制約の所為だったり、目的に対する動機づけの所為だったりと様々な 理由による。
そんな時は、大体南の方に向かってバイクを走らせる。
つまり木曽三川公園方面に向かう訳だが、何故かというと、この方面には小生が良く 走るバリエーションルートが幾つもあり、それなりに楽しめるからだ。
今日もこれといった行先が思いつかないまま、出掛ける準備だけが済んでしまった ので、定石通り木曽三川公園方面に向かう事にした。
羽島市から下流の長良川左岸堤防道路はいつ走っても気持ちが良い。
遠く伊吹や養老の山並みが見渡せる開けた視界は、いやがうえにも解放感を満たしてくれるし、車があまり走らないので、たまに注意力を欠いて走っていても安心感がある。
安心といえば、バックミラーは小生が安全にバイクを走らせる上での必須アイテムだ。
ライド中に行き交うロードバイクを観察すると、ミラー装着車はまだ少数派の様だが 何故だろう。
「如何にも初心者みたいで格好悪い」とでも思っているのか?
だが、走行中に後方確認のために、身体を捻ってバランスを崩すor車線をはみ出す等の危険性を考えた場合、見栄えなど如何ほどの価値があるというのか。
慣れてしまえば、一瞬視線を右下に落とすだけで簡単に後方確認ができる、ほんの一瞬の事だ。
ロードバイクの基本構成パーツ以外で、走行に不可欠な(というか役に立つ)アイテムを3つ挙げるとしたら①サイクルコンピューター②ボトルケージ③バックミラーというのが小生の持論である。
ボッチローディーの習わしとして独りあれこれと考えながらバイクを走らせていると、不意に或る思いが頭に浮かんできた。
「そうだ、草餅の店に寄ってみるのも良いな」
実は先日TVで、人気の草餅(よもぎ餅)を求めて県外からも人々が押し寄せるという和菓子店が紹介されていたのだが、その店がここからほど近い平田町にあるのだ。
平田町は前方の南濃大橋を渡って西方向だから、真っ直ぐ進んで木曾長良背割堤を走るという、当初の予定は急遽変更することになった。
南濃大橋を渡り、メインの道路は避けて間道を千代保稲荷神社(通称おちょぼさん)に向けて走る。
おちょぼさんは、この辺りのチョットした有名観光地(一説では日本3大稲荷の一つ らしい)で、こんな時期(COVID-19)でも参拝客が訪れ、参道界隈の店は食べ歩き等をする人達でそこそこ賑わっている。
食べ歩きグルメの中でも特に人気なのが串カツで、小生も何度か食したことがあるが、どて(ホルモンを味噌煮した煮汁)に漬けた串カツの独特な味わいは食欲をそそるものがある。
その昔、おちょぼさんの串カツは赤犬の肉だと誹謗中傷する言があったが、真偽のほどは定かではない。
しかし、小生が子供の頃に住んでいた岐阜駅近くの街の一角に、ハルピン街(戦後に黒竜江省哈爾浜から引き揚げてきた人達の多くが住み着いたので付いた名前)と呼ばれる地域があって、そこの肉屋では犬の肉が売られていたし、後年に中国で鉄道旅行をした時に、駅頭の売店で、狗肉と書かれた干肉のパックが売られていたのを見たこともあるので、犬肉食は一つの食文化として尊重されこそすれ一概に否定し得るものではないと思う。
犬肉食を野蛮とするのは、欧米人が鯨肉食を野蛮とするのと同じ論理とも言え、そこには自らを優越とする意識が見え隠れしていると考えるのは小生だけか・・・。
おちょぼさんの赤い鳥居に別れを告げて道を南西方向にしばらく進むと、駐車場に車が10台ほども停まった平屋の建物が目に入った。
「あっ在った、ここだここだ!かわしまやの看板だから間違いない」
TVで見て想像していたのとは違う建物の造りだが、目的の草餅の和菓子屋さんに到着である。
軒下にバイクを停めて店に入ると、案の定、店内は結構な人だかり。
だが、その誰もが色んな和菓子の品定めをしており、ちょうど店員さんの前には誰もいない。
「チャンスだ」小生が買い求めるのは草餅だけだから、ほかの商品には目もくれず店員さんめがけてまっしぐら「草餅5個下さい」と告げる。
1個90円で〆て450円、ワンコインで買えるとは何と良心的な店だ。
店を出ると、隣の建屋で数人が何やら作業をしているのが目に入った、何だろう?
すると、店主らしき親爺さんが手招きしているので、それに引き寄せられる様に近寄って見させて貰うと、黄色く熟した柚子の皮剥き作業をしている事が判った。
柚子のいい香りが辺りに漂う、今度来た時は柚子饅頭を買ってみる気になった・・・。
さぁこれからどう走ろう。
木曽三川公園を目指すとして、既知のルートは何通りもあるが、今日は何だかその何れのルートも走りたくない気分。
「よーし、今日は農道を中心に出来るだけ真っ直ぐ走ってみよう」と決めた。
農道と云っても道の舗装はそれほど悪くはないし、結構直線の道で真っ直ぐ進める。
この辺りは水郷地帯で河川や溜め池が多く、やがてそれらが進路を阻むので、止む無く道を替えてまた真っ直ぐ進む。
農道の両側には大豆畑が広がっていて収穫はもう真近という感じの様だが、大豆の収穫ってどういう風にやるんだろう?
米国では大型トラックほどもある巨大コンバインで収穫している様子をTVで観たことがあるが、耕作面積から考えても日本じゃそれは無理。
仮に北海道で2t車クラスだとしたら、ここらでは軽トラサイズのコンバインか?
案外、手刈りで収穫してるかも知れないので、是非見てみたいものだ。
初めての道を走り続けて、ようやく見知っている場所へ出た。
田外ノ池公園という所で、そこから南に向かって川沿いに、直線で2.5㎞ほども続く桜並木は、以前、桜の開花時期に遠くから薄桃色の連なりとして認めたものだ。
ここまで来れば木曽三川公園まではあと少し、ペダルを回す脚に力を込めて先を急ぐ。
遠くに見慣れた展望タワーを認めてから約10分、たどり着いた公園は何故か閑散としていて人影もまばら。
今日は休館日でもないのに「こんなことも或るんだなぁ」と少し寂しく思う。
COVID-19も第3波が拡大傾向にあるので、訪れる人もセーブ傾向という事なんだろう。
まぁそれはそれとして「さぁ、休憩場所のサンシェードの下で草餅を食べようか」と 先刻買った草餅を背中のポケットから取り出す。
ライド中に食べ物を口にすることは殆ど無いのだが、今日は特別という事でお目こぼしを願う事にした・・・。
トイレも含めて25分ほども休憩してしまったので、タイムスケジュールが少し狂った。
当初の予定では揖斐川沿いの道を帰るつもりだったが、チョット時間がかかってしまうのが明らかなので、木曽長良背割堤を走って帰ることに変更した。
今日は朝から快晴だったので、大地と空の境目が霞んでしまい、遠くを見通すことが 出来ないのが残念だが、この広がる視界の中に身を置くと、今日を生きる幸せという ささやかな至福を感ぜずにはいられない・・・。