風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

伊自良湖へ

 

今朝起きて外を見た時は良い様に思えた空模様だが、出掛ける準備を整えてから空を 見上げると、上天の半分ほどが高積雲(ヒツジ雲)に覆われていた。

「と云うことは天気は下り坂か・・・」

数時間後には雨が降り出すという様な 感じでは無いが、午後遅く若しくは夜には降り出すかも知れない?

このところ平野部では雨が降ってないから、コロナウイルスの飛散を抑えて感染症の 拡大を防ぐためには、雨は大いに期待したいところ。

しかし、長雨は外出の妨げになるから、時雨の様なのが良いと手前勝手に思う・・・。

さて、天候はそれほど悪くないし風も強くは吹いてないとすると、それはつまりライドに出るのに何の支障も無いと云うこと。

「それじゃ予定通り伊自良湖へ行くか」と腹を決めた。

伊自良湖は、釜ヶ谷山(696m:山県市)を源流とする伊自良川を堰き止めて造った 人造湖だが、今の季節だと湖畔周辺の紅葉狩りにはもう遅いので、多分静かな湖畔の 風景が楽しめる筈だ。

 

居宅を出て街中を北へ向かって走る。

外気温は10℃前後か?今日から冬用のウェアに替えたので、風を受けても寒さは感じ ない。 

念のために薄手のベストをポケットに忍ばせてきたから寒くなっても大丈夫だけど、 今のところそれを着ることは無さそうだ。

長良川を越えて伊自良川沿いの道を走っていると、右手方向に周囲の軒を越えて赤茶色の円錐状の連なりがあるのが見え、それが妙に綺麗だったので、進行方向とは違うが 行ってみることにした。

メタセコイアかな?」走りながら考える。

昔は、学校の校庭や公園あるいは寺社の境内などにイチョウの大木があったが、それらはいつの間にか無くなって、代りに植えられたのがヒマラヤスギやメタセコイアだ。

小生は、イチョウの黄色く色付いた樹容が好きだが、校庭や公園から姿を消した原因は、あの銀杏の嫌な臭いを多くの人が敬遠したからかも知れない。

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公園に植えられたメタセコイア

目的の樹に近付くにつれ、それが学校に隣接する公園に植えられたメタセコイアであることや、既に落葉も始まっていることが判ってきた。

2週間ほど前なら「多分美しい紅葉が見られたかも知れないなぁ」と少し残念に思ったが、それも後の祭りという事か・・・。

 

道を少しそれたので走るルートを修正し、岐阜大学脇の間道を通って北を目指す。

普段は通らない大学病院横の小道を走っていると、道脇の広場にヘリコプターが駐機 しているのが目に入った。

「Docter Heliだな、出動に備えて待機中か?」

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駐機場で待機するDocter Heli

昨年この病院に入院していた時には、病室の窓からその発着をよく眺めたものだが、 その時は小さな機体と思っていたものが、近くで見ると案外と大きいことにチョット 驚く。

このDocter Heliのカバー範囲は岐阜県全域に及ぶが、最遠の飛騨地区でも飛行時間は 3~40分ほどで、患者を収容して帰院するまでの時間は2時間以内で済むらしい。

確かに小生が病室から見ていた時も、飛び立って1時間半位で大概は帰って来ていた。

年間の出動回数は500件はあるらしいから、地域医療の重要なツールになっていることは間違いない。

但し、願わくは小生と家族、縁者がその御厄介になるのは避けたいものだ、神のみぞ 知る事ではあるけれど・・・。

 

山県市に入ると走路は山間の開けた視界の道を行く事になる。

車はそこそこ通るので散漫な気分での走りは禁物だが、少しスピードを上げて風を感じながら走ると、エンドルフィンが脳内に分泌されて束の間の幸福感に包まれる。

伊自良湖は正面左奥の青い山並みの麓だから、あと11kmほど走れば到着だ。

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伊自良へと続く山間の道

伊自良の集落を過ぎて快調に走っていると、美山への分岐を過ぎた辺りで青いプジョーに抜かれたが、何気なくナンバーを見ると一宮とある。

県外の人がこんな所まで来るとしたらワカサギ釣りか?「釣り人って結構遠出を厭わないからなぁ」と自分を差し置いて感心する。

道はわずかづつ登り傾斜となり、やがてヘアピンカーブを廻って短い坂を上ると伊自良湖畔に出た。

走りながら湖面に視線を投げると、方々で小舟に乗った釣り人が竿を垂らす穏やかな 風景が目に入ってきたので「ワカサギシーズンの始まりかぁ」とまた独り呟いた。

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山を背に静かな湖面の伊自良湖

湖畔を農産物直売所(ラブレイク)まで走って、周辺の案内看板の前でこれからどう するか思案しながら眺めていると、ここから沢沿いの路を釜ヶ谷登山道に向けて辿ったところにキャンプ場の表記があるのを見付けた。

「そう云えば若い頃ここにキャンプに来た事があったなぁ」と俄かに思い出してそこに行って見たくなった。

バイクをゆっくり走らせながら昔を思い出す。

「せせらぎの傍に張ったテント、焚火を囲んでの語らい、楽しそうな友の顏、確か夜半に雨が降って慌てたなぁ」と色々な記憶が朧気に浮かんでくる・・・。

思い出に浸りながら緩い登路をキャンプ場に辿っていると、路傍の空地に青いプジョーが停まっているのが目に入る。

「この車、確かあの時の・・・」てっきりワカサギ釣りに来た人と早合点していたが、ここに車を停めてると云うことは釜ヶ谷登山に来た人だったのか。

俄かに思考はこの登山者へと飛ぶ。

小生も、山登りをしていた頃はよく一人で山に入ったから判るが、人里に近いと云っても入山者が殆ど居なさそうはなこの山はチョット危険度が高いかも知れない。

木の根に躓き転倒してケガをするリスクは常にあるし、急に体調を崩して人事不省に なる事だって無いとは言えない。

他人事ではあるが、何事も無く下山することを願うばかりだ。

 

キャンプ場まで登ってきたが、残念ながら記憶にある深い木立に囲まれたせせらぎの あるテント場は何処にも見当たらなかった。

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寂しげな佇まいのシーズンオフのキャンプ場

 そこにあるのはBBQハウスと陽の射す広場、そして山ぎわに寄り添って点在する少し古びたバンガロー数棟だけ。

それもその筈で、記憶のそれは40年も前のものだから、今もそれが変わらず残っている方が可笑しいのだ。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり・・・」平家物語の冒頭の一節が、思わず口から漏れ出た。

 

キャンプ場から更に100mほど先に行ったところがこの登路の終点で、路の感じから して、多分この先は登山道に変わるんだろうと思われた。

チョットだけ先に行ってみたい誘惑にかられたが「もう登山は卒業した筈」と考え直して引き返すことにする。

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路の先は釜ヶ谷山への登山道

湖畔まで戻って時計を見るともう12時近い時間だ。

「そろそろ帰らなくっちゃ」

折角だから湖畔を1周してから帰途に付くことにした。