先週、いつもの年より早く雪が降って「いよいよ冬も本番か」と思っていたら、この ところ日中の気温は例年並みに10℃前後まで上がり、少しだけ拍子抜けしている。
先日、近くの堤に植えられた桜並木で2本ほど花を咲かせている木があったので、家人に「暖かいので狂い咲きしている桜があったよ」と話すと「それは多分狂い咲きじゃ なくて冬桜が開花しているのよ」という返事だった。
確かに緋寒桜は2月頃に咲くし、11月頃に紅葉と一緒に見られる十月桜という品種も あると以前どこかで聞いた。
「なるほどね、この時期に咲く冬桜という品種もあるんだ」と得心した。
桜は4月頃に咲くものと思うのは固定観念で、ソメイヨシノ=桜の定型化が疑い様も なく進んでいることの証左かも知れない。
さて、年末を迎えて雑用が多くなったので、年内にライドに出掛けられるのは今日と あと1日くらいになった。
天気も風も問題なしで今の外気は8℃くらい、その気になれば遠出も可能な条件だが、結局「今日はのんびりサイクリングロードでも走ったら?」というもう一人の自分の 囁きに応じて木曽川サイクリングロードを走ることにした。
(実は最近体調がイマイチなので、遠出を回避したい心理が働いたと吐露しておく)
笠松の木曽川橋までは街中走行なので、人や車の動きに注意を払う走りが続いたが、 橋を渡ってサイクリングロードにバイクを乗り入れればその緊張感からも解放される。
「よしよし、これで当分はストレスフリーで走れるぞ」
居宅を出てから20分ほども走って来たので、身体が温まって脚も廻る様になってきた。
調子に乗って少しスピードアップすると、風の抵抗は増すがそれがかえって爽快な気分にさせる・・・。
このサイクリングロードはYouTubeで度々紹介されており、休日には多くのローディーや家族連れで賑わうが、平日は結構空いていて走り易い。
小生は生来混んでいる所が嫌いなたち(決して人嫌いというのではない)なので、ここを走るのは専ら平日限定だ。
同じ様に考える人が何人かはいるもので、ここを走っているといつもの様に出くわす 人達がいる。
今日最初に会ったのは、随分以前からロードバイクに乗っているらしき雰囲気を醸し 出している小生と同年配の男性。
バイクはクロモリ(多分)で、いつもサイクルウェアは着ずヘルメットも被らず(夏 は短パン・タンクトップで麦藁帽、冬はトレパン・ウィンドブレーカーにつば付帽子 の恰好)に走っている。
最初の頃は行き交う度に頭を下げて挨拶していたが、先方は一度として挨拶を返して くることは無く、その内小生も頭を下げるのがバカらしくなって止めた。 (悲しいねぇ)
挨拶するかしないかは個人の考えだから百歩譲っていいとしても、ヘルメットを被らずにロードバイクで走るのは止めた方が良いと他人事ながら思う。
3年ほど前の夏の事だが、カーブを曲がる時に砂利でスリップ転倒して右側臀部を強打し10cm大の瘤をつくった。
この瘤は翌日になっても小さくならず内出血の跡も拡がってきたので、医院に行って 切開処置して貰ったが、医者も驚くほど大量の血糊が出て、完治するのに3週間も要 した。
もしこの打撲が側臀部ではなく側頭部だったらと思うと今でもゾッとするし、不測の 事態に備えてヘルメットの重要性を再認識した出来事でもある。
次に会ったのは、インラインスケートの2人の男性。
年齢は小生より少し上というところか?この2人を見かける様になった当初は、両人共少しおぼつかない足取りで滑っていたが、今では随分と上達し「好きこそものの上手 なれ」を体現している様だ。
彼らを走路上に見付けると、バイクを道端に寄せて道を譲ったり、声をかけて接触事故を防ぐ様にするのが常だ。
最後に会ったのは、自転車旅に備えたトレーニングにいそしむ(小生の勝手な想像) 感じの30代の青年。
バイクは、フラットバーハンドルのランドナーを荷物が沢山詰める様に改造した頑丈 そうなもので、これなら「どんな旅にも耐えられそう」と思わせる代物だ。
この車体で、重いギアを回しながらかなりのスピードで走っていく様は、正にトレー ニングそのもの。
昨年までは、彼を見かけるのは長良川の左岸堤防道路~背割堤だったが、今年はこの 木曽川サイクリングロードで何度か見かける様になった。
今日も、いつものバイクで前方から走ってくる彼を認めたので、すれ違った時に手を 挙げて挨拶すると、頷く様に頭を下げて走り去っていった。
愛知県側のサイクリングロードを扶桑緑地公園辺りまで走ったところで、上空を雲が 覆い始めて日差しが遮られ、辺りが俄かに寒くなってきた。
西方の空を伺うと晴れ間は皆無で見渡す限りの曇天「これは帰る潮時ということか?」の思いに背中を押されて引き返すことにした。
帰路は岐阜県側のサイクリングロードを走ることにして、木曽川にかかる小網橋 (支流)と各務原大橋(本流)の大小2つの橋を渡っていく。
各務原大橋を走っている時ふと右手(東方面)に視線を振ると、遥か彼方に白い 山並みが望見できた「恵那山と中央アルプスだ」
山を見ると古い思い出が蘇る。
「随分と昔、恵那山に単独行して山頂近くの水場でテント泊した時の事、夜半に外で 何物かが歩き回る物音がして目が覚めた。こんな夜中に何だろう?まさか餌を求めて クマが出たのか?恐る恐るテントから顔を出して様子を伺うと、近くでヘッドランプ の明かりがチラチラ。何のことは無い登山者が水場を探して歩き回っていたのだった」
あの頃は小生も若く怖いもの知らずで「結構無鉄砲な山登りを繰り返していたなぁ」と懐かしく思い出す。
岐阜県側のサイクリングロードを木曽川に沿って下流へと走って笠松まで戻ってきた。
先ほどまで雲が覆っていた上天には青空が拡がり始め、陽光の明るさが気分を軽やかにする。
ここまで急いで走ってきたが、その心理的な枷も解けつつあるので、川端のみなと公園にある東屋で本日最後の休憩をとることにした。
東屋の木組みのベンチに腰かけて、独りボーっと周囲の景色を眺めていると、時間の 経過も忘れてつい長居をしてしまう・・・。
15分ほど休んでようやく帰る気になって来た。
バイクに跨って独り呟やく「これで今年のライドは終わりにするかな?」