問題:日本は海に囲まれた島国ですが47都道府県のうち海が無いのは?
答え:栃木、埼玉、群馬、山梨、長野、岐阜、滋賀、奈良(結構あります)
岐阜は海なし8県の一つで、そこに暮らす小生には海の風景はチョットした憧れみたいなものだ。
紀行番組などで海岸線を走る列車の情景を目にしたりすると、時折海をのんびりと眺めていたいと想うが、そんな時は伊勢湾に向けてロードバイクを走らせる。
居宅から伊勢湾までは直線で38.5kmの距離。
しかし道は直線的には造られてないので、実際には長良川沿いに道を河口へと南下し、木曽川沿いに道を北上する周回コースを辿る場合、その往復距離は約100㎞。
まぁロングライドの端くれみたいな距離だが、ずーっと平坦地を走るので強い風さへ 吹かなければ身体負荷的には大したことはない。
今朝の天気予報では、今日は終日好天で雨に降られる心配は無いとの嬉しい予想。
久々に海を眺めてぼーっとするのも良いかなと思い、いつもより早めに身支度を整えて家を出た。
外気温は17℃くらいだが長袖ジャージの下に長袖アンダーを着たので風を切っても寒さは感じない。
ただ北西より少し強め(3~4m/s)の風が吹いているので、南へ向かうライドとしてはイマイチだ。
往路は背中を押されて快適に走れるが、復路は斜め前方よりの風をまともに受けて走る事になるので「行きはよいよい帰りは恐い」になるかも?
まぁこれから気温が上がると風が止むかも知れないし、ここはポジティブに考える事にしよう。
長良川左岸堤防道路まではいつもの町中走行。
「ここでの走りにストレスが無ければ今日のライドも上手くいく」そんな迷信めいた 思いがフッと脳裏に浮かぶ。
ある意味危険と隣り合わせの自転車遊びには験担ぎも必要と自戒しつつ、出会い頭の 事故なんてものに遭遇しない様、車が来そうな交差点では充分減速して左右確認で通過する。
30分程走って羽島市堀津で長良川左岸堤防道路に出ると、ここからはひたすら堤防道路を走る事になる。
対岸の長良川右岸堤防道路は、岐阜と桑名を結ぶ幹線道路の一つで大型車などの交通量が多く、ロードバイクでの走行には相当の覚悟が必要だが、今走っている左岸道は途中で南進路が途切れる事から車の通行量が極めて少なく、結果的にローディー向きの道となっている。
南濃大橋を過ぎると車は殆ど来なくなり道はもうサイクリングロード同然だ。
追い風を背中に受けスピードは32~33km/hが苦もなく維持できるので、脚力が急に アップしたような、このまま何処までも走っていけそうな変な感覚に囚われる。
川面を渡りくる風が気持ちよく身体を包み、その解放感に刺激されて右手の養老の青い山並みを眺めながら両手を広げて大きく息を吸う。
あの山並みの少し窪んだ辺りが二ノ瀬だな、少し時間が早いけどもう誰かヒルクライムに汗を流してるだろうか?
そしてあの中腹の建物が水晶の湯で外湯からの眺望は抜群だ、今は閉館中と聞いたが 再開はいつごろかな?
などと自問しながら悠然とペダルを漕ぐ。
木曽長良背割堤が近づいてきた。
この背割堤の走路はもう300回以上走っているが、ここを走る時は自然とペダルを漕ぐ脚に力が入る。
車止めゲートの脇を抜けて前方を見上げた時、前方に人影を認めると追い駆けてみようと思うし、例え前に誰もいなくても後から来る誰かに抜かれまいとスピードを上げる。
いつの頃からか小生にとってこの背割堤約10㎞は、不特定な誰かとのレース区間の位置付けが定まってしまった。
そんな訳で今日は平日で前走する人影は見えないが、いつもの様にギアを1段上げ、 前傾姿勢でケイデンスも上げて、僅か20分足らずの仮想レースモードに入る。
脚と腰に疲れが溜まってきたころに視界が開けて活力が補充されると、残り1㎞の目印1本松まではあと少し。
喘ぎながらそこを通過し、車止めゲート手前で振り向いて追走者を確認するが、やはり誰も追ってきては居なかった。
立田大橋(木曽川にかかる橋で堤を挟んで長良川側は長良川大橋)の下を抜け、そのまま堤防道路を1.5㎞走って船頭平河川公園で停まる。
ここは桑名・長島方面へライドする時の小生御用達?の休憩場所で、トイレは清潔に清掃されており不快感ゼロだし、草地に設けられた東屋でのしばしの休憩も至極快適だ。
ここまでの走行距離は約30㎞だから、海まではあと14kmほど。
早々に休憩を切り上げて出発する。
道は相変わらず長良川左岸堤防道路で、車の通行が少なくストレスフリーで走り易いが、遮るものが何もないため西風が強く吹いてロードバイクの走行を不安定にさせる。
長良川にかかる東名阪高速の渡川橋が近づいてきたところで突然それは起こった。
「ん、何か小石を踏むような異音がするぞ」
視線を落としてタイヤを見るとリアの接地部が少し膨らんでいる様だ、と思う間もなくサドルにあの嫌な感触が伝わってきた。
「チクショウこんなところでパンクか」
バイクを停めてリアタイヤを確認するとチューブには未だ少しAirが残っている様子。
一気に抜けてないからパンクではなくバルブ緩みの空気漏れかもしれない?と希望的 観測をしてチューブにAirを入れ直しバルブをしっかり締めて走り出す。
「大丈夫かな?大丈夫であってくれ」と願いながら数百m走ると、またしてもあの嫌な感触が・・・。
やっぱりパンクだ、チューブを替えるしかないと諦めた。
堤防道路は風の吹き曝しなので、法面を降りた平地に場所を見つけ早速パンク修理に 取り掛かる。
「そう云えばこのチューブ結構長持ちしたなぁ」
チューブにも運不運があって、取り替えて1日でパンクに見舞われるものもあれば1年 近く持つものもある。
チューブの品質がパンクの原因であることもないでは無いが、小生が思うにパンクの 大部分は偶然の集積の結果である。
たまたま通った道にたまたまパンクの原因になるものが落ちておりたまたまそれを踏んでしまうと云う訳だ。
神の奇跡もバイクのパンクも根本のところはさして違いはないと言ったら信心ある人に怒られるだろうか・・・。
さぁ今日のパンクの原因は何かな?
タイヤをホイールから外して内面を人差し指で撫で、もし引っ掛かるものがあればそれがパンクの原因だ。
タイヤ内面を1/3ぐらい撫でたところで指先が見つけたそれは鋭く尖った小さな金属片で、他には何も刺さってはいなかった。
この金属片による傷ならそれは針を刺した程度の穴だろう、道理でAirがすぐには抜けなかった訳だ。
パンク修理を終えて携帯で現在時刻を見るとすでに11時を回っている。
予定通りならナガシマスパーランドの先の護岸でのんびりと海を眺めている時間だが、まだ12㎞も手前の堤防道路にいるという事か・・・。
「これから海まで行って直ぐに引き返しても、ここまで戻るのに1時間はかかる。
それから30数㎞の道のりを岐阜へと帰ることになるが、強くなった(多分風速7~8m/sはありそう)北西風が邪魔をして往路の様に速くは走れない。
午後1時までに居宅に戻ることは全く不可能で下手をすると2時を回るかも?」
とあれこれ思いを巡らす。
予定はあくまで予定、それに拘泥する必要はない。
随分と昔、北ア槍ヶ岳肩の小屋のトイレに落書きがあった。
「予定は決定にして未定にあらず」誰が書いたか計画を断念したくない気持ちが解らないではないが、山では臨機応変な対応こそが身を守る術であり、岳人らしからぬ妄言と記憶にとどめている。
そこまで大した事では無いが、海まで行くという今日の計画はここで断念することにした。
堤防道路にバイクを担ぎ上げ、それじゃ帰ろうとペダルにビンディングを掛けると、 北西からの風が一段と強く吹き付けてきた。
復路の困難を予想させる風で心を萎えさせるが仕方が無いと諦める。
左手奥の鈴鹿山脈が遠く青く霞んで見え、萎えた心を慰めてくれるのが嬉しい。
この辺りから望む山の連なりは雪をまとった冬の景色が一番好い(ライド中に見付けた好きな風景の一つだ)が、最近は気候変動で降雪時期も降雪量も影響を受けており、 鈴鹿に雪が降るのは1ヶ月半くらい先のことになるだろう・・・。
立田大橋まで戻ってきたところで改めて帰路ルートの選択をする。
先刻岐阜から走ってきた長良川沿いの道をそのまま戻るか?それとも橋を愛知県側に 渡って木曽川沿いの道を走るか?一瞬迷ったが、当初予定が木曽川沿いだったことも あり木曽川沿いを帰ることにした。
立田大橋から上流の東海大橋までの木曽川左岸堤防には自転車道が設けられているが、走路途中の数ヵ所に車止めがあってその都度バイクを降りて通過しなければならず、 何か走るのを邪魔されている様な気分になるのでここは走らない。
小生が専ら走るのは立田大橋下の信号を左折すると始まる通称「レンコン街道」。
蓮の花が咲く7月頃にここを通ると、道の両側一面に広がる蓮畑で薄桃色の大輪の花が咲き乱れる風景を目にすることが出来る。
晩秋を迎えてこれから見られるのは蓮根の収穫作業で、もう方々でその作業が始まっていた。
蓮根の収穫といえば、作業者が泥水に胸まで浸かってホースから出る噴流水で土中の 蓮根を掘り出す作業を思い浮かべるが、ここ愛西では水を抜いた蓮畑をパワーショベルで溝状に深く掘って蓮根を露出させて収穫していた。
どちらが良いか素人の小生には判らないが、いずれにせよ大変な作業であることには 違いない。
レンコン街道を走って東海大橋まで来たが、ここからは堤防道路を馬飼(頭首工)大橋まで行くことにした。
橋への斜路をエッチラオッチラ登って堤防道路に出ると強い風が吹きつけてくる、障害物の無い川面を渡って風は勢いを増した様だ。
堤防道路を選択したことにチョット後悔したが儘よ行くしかない。
強風に逆らうように脚を一生懸命に廻すがスピードは全くあがらず20km/hを出すのが精一杯。
レンコン街道は24~25km/hのスピードで走ってこれたのでその差は歴然、やっぱり 下道を行くべきだった・・・。
取り留めのない思いを頭の中で繰り返しながら黙々とペダルを漕ぐうちに馬飼大橋が近づいてきた。
本来ならこのまま木曽川を遡上(北上)して木曽川橋で岐阜県側に渡り居宅を目指すのだが、チョット疲れてきた気分なので馬飼大橋を渡って羽島経由岐阜のショートカットルートをとる事にする。
居宅まであと15㎞程の距離なので40~50分で帰り着けるだろう。
久々のパンクに見舞われ計画も変更したが、今回も概ね愉しいライドだった・・・。