風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

サイクルトレイン

 

昨日外出から戻ると、会社勤めをしていた頃の知人から封書が届いていた。

永らく疎遠にしており「何だろう?」と思い早速開封すると、随分昔に退職した共通の知人の連絡先等を知っていれば教えて欲しいとの内容だった。

古い情報と前置きして詳細を伝えることにしたが、果たして役に立つかどうか・・・。

小生はあまり社交性が高い方ではないので、会社勤めをしていた頃はそれなりに友人も居たが、会社を離れると一気に人付き合いの頻度が減り、今では同期や旧友との年数回の飲み会(昨年はCOVID-19でそれも無しだったが)で旧交を温めるばかりである。

まぁ、だからと言って寂しさが募る訳じゃ無いから別に良いんだけど・・・。

 

さて、今日の行先は多度大社。

木曽三川公園からチョット足を延ばした先の多度山麓にある、上げ馬神事の祭礼で有名な神社だ。

桑名方面へライドする時は近くを通ってもスルーすることが多いが、年初でもあり珠には参拝してみるのも良いかなと思った次第で、距離的にも往復70kmほどで丁度良い。

まずは居宅近くのポストに知人宛て封書を投函し、一仕事?終えた安堵感に浸りながら出発する。

 

風は北寄りの微風で日中は気温も上がるとの予報なのでまずまずのライド日和だ。

街中を抜けて羽島へ向かう道に入ると、脚も回る様になって軽快にバイクが進み、徐々に気持ちも高揚してくる。

「よーし脚も軽く快調!」と呟いて橋を渡り加速しようと前方を覗うと、停車した車の長い列とその先の赤い点滅が目に入ってきた。

「事故か?」車列の横をすり抜けて先に進み、事故現場を横に見ながら停まることなく通り過ぎる。

どうやら車4台が絡む事故の様で、救急車も停まっていたから怪我人も居る様だった。

事故発生からそれほど経ってない「と云うことは封書の投函で寄り道してなければ?」ひょっとしたら事故に巻き込まれていたかもとの変な考えが浮かんで消えた。

世の出来事の多くが偶然の集積の結果とすれば、これを幸運と呼ぶべきかどうかは判断に迷う処だろう。

「まぁ周りに注意して走ることだな」と注意散漫になりがちな自分を戒める言葉を独り呟いた。

 

長良川左岸堤防道路に出て広い視界の道を南に向かって走る。

右手養老山地の青い山並みの向こうに顔を出す鈴鹿山脈の白い稜線が綺麗だ。

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長良川堤防道路から養老山地を望む

あれは藤原岳から御池岳へと続く稜線の連なりだろうか?

昔、残雪期にあの稜線を単独行した時の残影が、モノクロ映画の様に脳裏に浮かんでは消えた。

思えばあの頃から独りでの山行きが増えていった。

若気の至りと言うしかない無謀な山行(危うく遭難しかけた)もあったが、それも今では懐かしい思い出の一コマだ。

 

周囲の風景を楽しみながら軽快に走って木曽長良背割堤までやってきた。

ここからの10kmはほゞ自転車専用道みたいなもの、車を意識しない自由な走りを満喫できるから好きだ。

鼻歌交じりにバイクを駆ること数分、と前方にローディーの後姿があるのに気付く。

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背割堤には前走するローディーが

追うとも無く走って滑空場横で並んだので、すかさず「どちらまで」と声をかけると、意外にも返ってきたのは女性が発する「多度大社です」の聲。

後姿から少し華奢めな青年と思っていただけに少し動揺したが、それは噯にも出さず「一緒ですね」とまた返した。

それから10分余り幾つかの話題を語らいながら並走したが、これ以上長い同行は相手の迷惑だろうと心得て「それじゃお先に」と挨拶して先を急ぐことにした。

最近は女性のボッチローディーをちょくちょく見かける様になったが、それが良い事なのかどうか、古い価値観に縛られている小生には能く判らない・・・。

 

木曽三川公園展望タワーの横を抜けて山に向かって油島大橋を渡れば、多度大社までは残り4kmほど、養老鉄道の踏切を越え古い街並みの残る参道を西に詰めると10分余りで境内前に到着した。

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油島大橋を超えて進む
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 多度大社               本宮へ続く参道

参集殿の横にバイクを預け、手水舎で身を清めた後鳥居をくぐって拝殿へと向かう。

山懐深く抱かれた本宮への砂利敷を独り静かに歩んでいくと、徐々に心が澄明になっていく様な気がするのは何故だろう。

木立に囲まれ静寂な雰囲気を醸す本宮の祭神は天津彦根命天照大神の子神)

浅学菲才の小生だから何にご利益がある神様か知らないが、今の願いは離れて暮らす 2人の娘家族の無事「災禍に遭わず健康で暮らせる様に」とお願いした。

 

参拝を終えて砂利敷を中ほどまで戻って来た時、前方に背割堤で別れた女性ローディーの姿を認めたので「おっ結構早い到着だな」と思いながら視線を送ると、彼女も小生に気付いたらしく笑顔を返してきた。

互いに足を止めて二言三言の言葉を交わして「それじゃぁまたどこかで」と言って別れたが、多分そんな偶然は勿論無いだろう・・・。

 

さて帰路だが、当初は往路をそのまま戻るルートを想定していたが、あまり面白くないので変更する事にした。

代案は兼ねてやりたいと思っていた養老鉄道サイクルトレインでの輪行

ほんの思い付きなので、細かなことは駅で決めることにして最寄りの多度駅に向かって参道を走る。

 

駅に着いて時刻表を見ると直近は12:19発、20分の余裕があるのでどこまで乗るかをGoogleMapで調べると駒野駅までが良さそうだと分かった。

距離11km、乗車時間17分のミニ輪行という訳だ。

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 養老鉄道多度駅            ホームで電車を待つ

サイクルトレイン乗車口でバイクのトップチューブに腰掛け待つこと数分、定刻通りに電車が来た。     

養老鉄道サイクルトレインは、バイクをそのまま載せるヨーロッパ方式だから輪行袋は不要、しかも運賃は人の乗車賃だけだから使い勝手が良い。

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2両目に乗車              バイク毎座席へ

乗車して車内を見廻しサイクルスタンドを探すが何処にも無く、どうやら座席の前で手で支えろという事と合点した。

乗客は小生を含めて4人、多分日中の乗客数は少ないので自転車が座席の前にあっても問題は無いのだろう。   

列車はソコソコのスピードで走るが3~4分で次の駅に着いて停まるので、押し並べるとバイクで走るスピードと変わらないというのが実感だ。

 列車の揺れと窓越しの暖かい日差しについ瞼が下がってしまった頃、駒野駅に到着のアナウンスが耳に届く。

「おっと危うく乗り過ごす処だった」忘れ物が無いことを確認して列車を降りた。

 

ここからは揖斐川沿いを今尾橋まで走り、輪之内⇒安八⇒墨俣と走り慣れた間道を辿れば1時間チョットで居宅に着ける筈だ。

駅頭で身支度を整えて走り出すと、何だか脚が重く感じる。

どうも休み過ぎた様だ・・・。