連休中の山での遭難が報道されていた。
悪天候が原因らしいが、残雪期の山の厳しさをチョッピリだけ知っている小生は「然も在りなん」と思う。
若かりし頃のこと、北アルプスの唐松岳から五竜岳を2泊3日で縦走しようと、5月連休を利用して出掛けた。
登山初日は好天で、少し緩んだ雪を踏みしめながら辿る尾根筋からは、白銀に輝く白馬三山(白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳)や五竜岳が綺麗に見えた。
しかし天候はその日の夜半に急変した。
翌朝起きると山小屋の中はひどく寒く、柱に掛けられた寒暖計を見ると、室内は0℃、 外気温は‐5℃近くを示していた。
「もしかして・・・」と嫌な予感に囚われて外に出ると、案の定そこは吹き荒ぶ降雪 のただ中だった。
雪は終日止みそうに無く縦走は危険と判断し、同行を希望した同年配の登山者と二人で下山することにしたのだが、その判断もまた危険と隣り合わせだった。
下山路には斜面をトラバース(横断)するところが数ヶ所あったが、此処を通過する時に味わった怖さは今もありありと思い出すことが出来る。
夜半からの降雪は40cm近くもあり、斜面に脚を踏み出す度にその雪面がザァーと崩れ 落ちてゆく。
表層雪崩(硬い雪面上に積もった新雪が滑り落ちる現象)を起こしてるので雪と一緒に滑り落ちたら遭難は間違いないと、ピッケルを雪中深く刺し込んで、それを支えにアイゼンを着けた靴で足元を踏み固める作業を繰り返しながら、少しずつ進むしか方法は なかった。
一緒に下山した彼はピッケルを持っておらず、小生が先行して作った足場を頼りにするしかなかったので、多分小生以上の恐怖を味わったのではないかと思う。
5月の雪山は美しく登行もまた愉しいが、その裏には冬山の様相が秘められていることを実感した一事だった・・・。
さて、今日は天候が安定しているとの予報だったので、ユックリとライドの準備をして10時過ぎに出発した。
ここ2日ほどローラー台でトレーニングしたので、脚が心持軽い感じがするのは嬉しいことだ。
1時間チョット、強い負荷はかけずケイデンスを少し高めにしてクランクを回し続けた御蔭で、永らく眠っていた筋肉が眼を覚ましたらしい?
行先が決まらないので取り敢えず西に向かって走っていくと、伊吹から揖斐にかけての山並みが目に入った。
新緑に彩られた山辺の景色に「そうだなぁ、山の方へ行ってみようか」と何となくそう決めて、大体の走路を頭の中で思い描く。
まずは、墨俣から犀川沿いの抜け道を巣南⇒美江寺へと走る。
今日は定番ルートを走りたくない気分なので、普段あまり通らない道を選んだが、結果はまぁ正解。
沿道の植え込みのツツジが気分を和ませてくれるし、眼に映る風景も新鮮且つチョットした発見があったりして結構愉しい。
「たまにはこういう走り方も善いね」と独り悦に入った次第だ。
真正町で根尾川を渡り、橋のたもとでこの先どっちに進むかを思案する。
「真っ直ぐ行けば揖斐方面、右に折れれば大野方面か」山を睨みながら暫し沈思黙考?
やがて「三水川沿いの道を山際まで詰め、野村山展望台に寄って帰る」そんなルート案がフッと脳裏に浮かんで、それに従い右に折れると決めた。
三水川は大野の町並みの外縁に沿って流れているので、その堤防道はあまり車が通らずローディーには走り易い。
主要道との交差点3か所を慎重に徐行してあとは快調にペダルを漕ぐと、もうすぐそこに山麓の新緑が迫る場所まで来ていた。
ふと路傍に視線を向けると「野古墳群」の看板が眼に入る。
「えっ!こんな所に古墳が有ったっけ?」古墳マニアでは無いが、俄かに興味が湧いたのでチョット寄ってみることにした。
訪ねた所は柿畑の中のこんもりとした小山、どうも形からして前方後円墳「と云うことはヤマト朝廷に繫がる豪族の墓か?」
古墳に登って周りを見渡すと円墳らしき草生した大きな盛土が6つあまり「確かに古墳群だな」と納得する。
説明書きによると5世紀末から6世紀初めにかけて造られたもので、開墾で失われたものを含めると全部で17基の古墳があったらしい。
眼を閉じて、いにしえの古墳群を思い描いてみるが、想像力の欠如が邪魔をして実像の他は何も脳裏に浮かばなかった・・・。
寄り道をしたが、目的の野村山展望台は正面の大谷山の中腹「あと数kmの距離だから 一気に走ろう」とペダルを踏む脚に力を込める。
大野運動公園の少し先でr-266に左折し、暫く走って人家が途切れるといよいよ小生の 苦手な登り坂。
わずか標高差100m足らずの登りだが、体重増に加えて筋力も酷く衰えた今の小生には辛い登りだ。
登路の半分ほどでギアを使い切り、あとは34T×28Tのまゝ「はぁはぁ」と荒い呼吸を 続けながら何とか展望台に到着、思わず「疲れたぁ」の言葉が出た。
思い起こせば昨年秋の金坂峠以降坂らしい坂は登って無い、この体たらくは当然と云えば当然の帰結。
ヒルクライム?の疲れを癒すには長めの休憩が必要だった。
「よーし帰ろう、帰路は偵察も兼ねて樽見鉄道に沿った道でも走ってみるか」と元気を取り戻した身体にチョットだけ活を入れた・・・。