風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

夏の川浦渓谷へ

 

小生はボッチローディーを自認しており、誰かと一緒に走るなどと云うことはほとんど無いが、この独りを好む性格は生まれついてと言うより、どうも腸内細菌が大いに関係しているらしい。

カルフォルニア工科大学の研究者が ”腸内細菌がマウスに社交性を与える仕組みを解明” して「Nature」に論文を掲載したが、それによれば ”無菌の環境で飼育されたマウスが仲間を忌避する行動をとるのは、脳から副腎にストレスホルモンを生産する指令が出ているためで、それには腸内細菌が無いことが関係しており、乳酸菌を与えて腸内細菌を増やすと、脳から副腎へのストレスホルモン生産指令がOFFされて仲間と触れ合う様になる”ということだ。

確かに、小生は若い頃から偏食が激しく、便秘気味で腸内環境は最悪、とても良い腸内細菌を養っていたとは言えず、それが時間をかけて”独りを好む”性格を醸成していったというのは案外的を射た考え方かも知れない。

最近は、意識的に良い腸内細菌を増やす食事に心掛けているので、少しは社交的な人間に変わってきてるのかなぁ?

 

さて今日は久し振りに板取へのライド。

板取川温泉を越えた先の ”川浦渓谷” は、最近絶景スポットとしてSNSなどでよく紹介されるので、一度訪ねてその景観がどんなものかこの目で確かめたいと、年甲斐もなく野次馬根性的に思ったからだ。

走路は、関市寺尾千本桜公園までは車で輪行し、其処から洞戸⇒板取⇒川浦渓谷と走って同ルートを引き返す往復70kmのセミロングのワインディングロード。

居宅からだと往復140kmほどを走らねばならず、小生の普段のライド時間(3~4時間)ではとても走り切れないので、今回も半分は輪行止む無しと相なった。

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桜葉が涼し気な緑陰をつくる寺尾千本桜公園

 10時少し前に寺尾千本桜公園を出発、取り敢えず板取川出会いまでは下りなので軽快にバイクを走らせ、束の間の爽快感を愉しむ。

薄曇りなので陽射しはそれほどでも無いが、気温は既に31℃と高く今日も暑さに苦しめられそうな予感に「水分補給に気をつけなくちゃな」と呟いて、あまり水分を摂らない自分自身に言い聞かせた。

 

板取川に出ると其処からは川に沿った道を上流へ向かって走る。

この川は福井県境の山々に源を発する水質の良い流れで、流域にはキャンプ場や水辺の遊び場が数多く点在するため、夏場のこの時期は県内外から多くの人達が訪れる。

今日も普段は静かな川沿いの道を多くの車が行き交い、キャンプ場の周辺や水辺の遊び場では、その非日常的空間をユックリと愉しむ幾多の家族連れの姿が見られた。

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 河原で遊ぶ人達            川辺のキャンプ場

小生も若かりし頃(もう40年ほども前だが)幾人かの友人とこの辺りにキャンプに来たことがあり、日中は何をして過ごしたか全く覚えてないが、夕方からは雨になって止む無くテント泊は諦めて、大きな味噌樽で造ったバンガローに泊まったという記憶だけが鮮明に思い出される。

あのキャンプ場はどこだったのか?もっと先に行ったところの、板取の集落からは随分と離れた場所だった様な気がするのだが・・・。

 

そんな曖昧模糊とした遥か昔の記憶をつらつら思い起こしながら走っていると、右手に大きなトンネルが見えてきた。

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R-256タラガトンネル(良く整備されているが走る車は少ない)

長さ4571m(無料通行できるトンネルとしては全国で2番目に長い)のタラガトンネルで、此処を貫けると郡上八幡へ繋がるが、ローディーの多くは何故か?手前の道を右に折れてタラガ谷越の旧道を走って郡上へと向かいたがる。

標高差390mを5.5kmほどで上る、平均斜度7%の結構脚にくる(はじめ緩く後半斜度が上がる)峠越え道なので、ヒルクライムを苦手と云うより嫌いな小生は専らトンネルを選択するのを事としているのだが・・・。

 

出発から1時間20分ほど走って板取川温泉バーデェハウスに到着。

川浦渓谷まではあと4kmほどを残すのみなので、水分の補給を兼ねて5分ほど休憩することにした。

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肌にヌルヌル感触の湯が女性に人気の板取川温泉

この日帰り温泉の湯は”ヌルッとした肌触り”が特徴のアルカリ性低張性低温泉で、日本三名泉の一つである下呂温泉と同じ泉質。

岐阜県内にはこの泉質の日帰り温泉が此処以外にも幾つかあるので、わざわざ下呂まで足を運ばずとも、住んでるところの近くでその泉質が楽しめるのが好いところだ。

ノンビリと湯に浸かり四肢を伸ばしてリフレッシュしたいところだが、今日はその予定は無いので、無用な考えは即座に断ち切ってバイクに跨った。

 

出発してすぐに結構な斜度の坂道が続き、それを喘ぎながら上っていると、左手に下る道から一人のローディーが現れた。

挨拶を交わし擦れ違った後「彼は何処から来たんだろう?」と一瞬思うも、直ぐに目下の問題である川浦渓谷への分岐点を探すことに意識を移し、取り敢えず眼の前の坂道を上がり切ることに注力する。

しかし、平坦になった道を更に5~600mを進んだところで、辺りを見廻して自分のミスにはたと気付いた「どうやら行き過ぎたらしい・・・」

先ほどローディーと擦れ違ったところが分岐点で、うっかり目印の看板を見逃したのは確実だった「やれやれ俺も衰えたもんだ」と自嘲気味に呟いて来た道を引き返すことにした。

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川浦渓谷へと続く道

杉原集落を過ぎると道は幅員の狭い山道に変わって川浦渓谷が近いと予感させる。

「多分あの山の麓辺りだな」と自分勝手に推測し”もう少しだ”と云う自己暗示をかけると、不思議と身体に活力が戻ってきてダラダラと続く坂を上るのも楽だ。

そんな風にして走り、ちょっと斜度のある坂を越えて下ると、道の先にトンネルが見えてきた。

「あれぇ川浦渓谷に着いてしまったぞぉ」推測でもう少し先と思っていただけに、突然の到着に少し拍子抜けしてしまった。

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川浦渓谷はもう少し山の中のイメージだったが・・・

渓谷は山に沿って逆U字型に形成されており、谷底に向かって垂直に切れ落ちる岩肌と其処に張り付く緑の木々、深い谷底を或るところは白くまた或るところはマリンブルーとなって流れる清冽な水面、これらが相互に補完して見事な渓谷美を演出している。

「確かに綺麗なところだな」「紅葉の頃はもっと綺麗かも知れないな」などとブツクサ独り言を呟いてひと時をおくった。

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清涼感に満ちた川浦渓谷の景観

 橋の上から渓谷の景観を楽しんだ後、先ほど見た看板に”上流2.5km(山の神神社)まで入れます”とあった山の神神社とやらに行ってみることにした。

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ゲートの先(山の神神社)へと向かう人は居無さそう・・・

ゲートを抜けてチェーンの廻る音だけが耳に入る静かな山道を奥へと走る。

「此処まで来るのは余程の物好きだろうなぁ」と少しだけ心細くなりながら尚も進んでいくと、道の先に突然トンネルが現れた。

照明は点々と灯っているが中は真っ暗で、その不気味な雰囲気の暗闇がこのまま進むのを躊躇させる。

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古から暗闇は魑魅魍魎の住処で人を不安にさせるもの・・・

左手の巻き道は閉鎖されており、このトンネルを貫ける以外に先に進む方法は無さそうだが「さてどうするかなぁ」MAPで調べるとトンネルの長さは790mもある。

ライトはあるが先の見通せない真っ暗なトンネルを800m近くも走るのは嫌だ、しかも路面は湧水で酷く濡れてそうだし・・・。

しばらく考えた末 ”山の神神社”は諦めて引き返すことにした。

どうしても行きたい場所じゃないし、時刻を見ると正午を少し回った時分で、丁度帰る頃合いでもある・・・。

 

川浦渓谷に別れを告げて山道を下っていくと、途中で矢継ぎ早に4台の車と擦れ違う。

「おっと、どういう事だ」先刻までは静かだった場所が急に賑やかな場所に変わる様で少し興ざめだが、帰る小生にはもう関わりないこと。

「勝手にどうぞ、精々楽しんで下さい・・・」と内心思いながら見送った。

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帰り道で立ち寄った”モネの池”(水草が繁茂し過ぎておりチョットがっかり)