風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

ベストタイミングって難しい

 

11月も下旬となり ”秋たけなわ” の感がいよいよ増してきた。

TVでは各地の紅葉情況を伝えているが、中でも多いのが京都の名所。

小生も以前は醍醐寺北野天満宮三千院といった紅葉の綺麗な寺社などを訪ねたものだが、この20年くらいはとんとご無沙汰。

それはこれらの観光地では ”紅葉を観に行ってるのか人々を見に行ってるのか” 分から ないほどの人出で混雑するから。

どんなものでも、落ち着いた心持ちで静かに観てこそその真価が判るというもの。

人波に揉まれながらの環境では気もそぞろになって、とても ”紅葉を愛でる” と云った 心安らぐ気分にはなれない。

 

京都の紅葉は確かに綺麗だが、それは所詮造形された美しさで謂わば管理された美しさに他ならない。

”美は乱調にあり” で、整然としたものより無秩序の中にこそ真の美しさがある?とするならば、我々はやはり人工物より自然にそれを求めるべきではないか?

小生が山登りをしていた頃に観た紅葉で、記憶に残るのは北アルプス涸沢の紅葉。

新雪をまとった山岳を背景に紅・黄・緑に色付いた木々が山肌を覆い、それにカールの色とりどりの天幕がアクセントをつける”という正に絶景と呼ぶにふさわしい景色。

今も脳裡にありありと蘇るこの風景、多少脳内でデフォルメされてるきらいはあるが、あの時感じた美への感動は間違いなく本物だった・・・。

 

さて、今日は板取の奥にある川浦渓谷へのライド。

先々週に出かけた郡上美並は紅葉見物には少し早すぎたので、同じくらいの緯度にある川浦渓谷なら「丁度見頃を迎えてそう」と手前勝手に思った次第。

 

板取は濃尾平野北端の山を越えた先にあるので、坂嫌いの小生にはこの山越えが最初の試練。

寺尾千本桜を通るr-59は、武芸川からしばらく緩い傾斜で山麓を上るが、九十九折れが始まると平均斜度6%で1.7km先の坂の峠まで一気に上がるので、ここが小生には結構辛い。

その辛さに耐えながら黙々と上ると、やがて視線の先に峠が見えてきて「やれやれあと少し」の声が口から洩れ出た。

坂の峠付近からの眺望(岐阜市街は山の向こう)

峠を越えると板取川まで4.3kmのダウンヒル

風を切って走る爽快感で上りの苦労が報われる時だが、それが束の間で終わってしまうのは分かっている。

費用対効果で云えば不釣り合いでも「これが自転車乗りの宿命さ・・・」と諦めるしかない。

 

川に沿ってr-81を洞戸に向かって走っていると、田圃に横たわる異物が目に入った。

それは大きな牡鹿で、道に散乱するヘッドライトやエンブレム等の破片から判断して、どうやら車と衝突してそこで息絶えたらしい。

鹿には正に致命的な災難でご愁傷様と言いたいが、車の運転手にも降って湧いた災難「ボケーっと走ってると飛んだ目に遭うぞ」と気持ちを引き締めて走ることにした。

田圃で絶命していた牡鹿(可哀そうだが仕方ない)

板取川は越美(福井と岐阜)国境の山を源流として、美濃市長良川に合流する澄んだ流れの川。

川に沿ってキャンプ場も点在するので、夏場は清涼を求める人達で賑わうが、今は川辺に人影とてない。

そんな板取川を上流へと辿るのが今日のライドで、R-256も車の通行があまり無いので安心して走れる。

   板取川は山あいを流れる        紅葉を映す澄んだ流れ(小瀬見橋付近)

Up Downを繰り返しながら徐々に高度を上げる道を、1時間くらい走って川浦渓谷への分岐に着いた。

昨年に川浦へ初めて来た時にはこの分岐を見落として直進し、20分ほど時間をロスったことがあったが、この失敗はしっかりと脳裏に刻まれたので、如何に年老いたとはいえ同じ失敗は2度とすることはない。

ここから渓谷まであと4kmほど、思いの外順調に来たので「少しゆっくり走るかぁ」とギアを1段落とした。

登坂の途中にある川浦渓谷への分岐(前方に集中してるとつい見逃してしまう)

川浦渓谷の駐車場には車が1台だけ停まっており、家族連れらしき3人が居たが他に人影は無し「よ~しこれならゆっくり渓谷美を堪能できそうだ」とバイクを牽いて遊歩道へと進んだ。

しかし、残念ながら期待した紅葉は既に盛りを過ぎていてガッカリ、まぁこればっかりはライブカメラでもないと丁度の見頃は判らないので「仕方ないなぁ」と自らを慰めるしかなかった。

トンネルを貫けると川浦渓谷        渓谷周辺は晩秋の装いだった

秋なので渓谷の底を流れる川浦谷川の水量は少ないが、それでも白い奔流となったり、深い淵をエメラルドグリーンに染めたりするのには充分な水量。

それにしてもこの山を裂いた様に深く切り立った岩壁の渓谷は、どんな風にして出来たんだろうか?

水の力だけで造られたにしては鋭角的過ぎる岩壁に「大きな地震で山が裂けたかな?」と勝手な想像をして楽しんだ。

深い渓谷を造った川浦谷川の流れ      岩壁を切り裂いて川は流れる
陽光の届かない淵は幽玄の趣さえある

橋の上そして遊歩道の東屋と様々な場所から渓谷を眺めて20分あまり「もう充分かな」と思えたので帰途につくことにした。

 

往路を13kmほど戻ったところでタラガ谷に寄り道。

タラガ谷は、タラガトンネル(4.6km)を通りたくないローディーが「走って来たよ」と自慢?するのを時々ブログで見掛ける峠越え道で、どんな道なのか興味があったのでチョットだけ走ってみようと思った次第。

板取と郡上を結ぶタラガトンネル(自転車は狭い路側帯を走る)

集落を通り過ぎ山間へと入る道を進むと通行止めの看板が目に入ったが、ゲートが開いているので「行けそうだな」と判断してそのまゝ進む。

道は苔生して車などがあまり通ってない様子がありあり、おまけに小枝や落ち葉も多くスリップして転倒しない様に慎重に走らなければならない。

この道は峠まで5.3km続くが、元よりそこまで行く気は無く、1kmほど走ったところで大体の様子は解ったので「もう充分かな」と引き返すことにした。

多分この道は近い将来”廃道”になるだろうが、直ぐ近くに安全便利なトンネルがあるのだからそれは仕方ない。

「栄枯盛衰諸行無常は世の習いということか・・・」と独り言を呟きながらゆっくりと坂を下った。

通行止めの先は管理放棄された道が続いていた

洞戸まで戻って板取川の橋上でしばし休憩。

秋の柔らかい陽射しを浴びながら欄干に凭れて川面をぼんやり眺めていると、水の流れが止まって自分が逆方向へ動いている様な錯覚を覚える。 

それを振り払う様に視線を上げ遠方を見ると、柳島山の少し青みがかったスカイラインが霞んで見えた・・・。

澄んだ水面に魚影を探したが見つけられなかった

この先の山越えをR-256かr-59かで迷ったが、山越えした後の走り易さはr-59が断然良いので、往路と同じ道を帰ることにした。

あと1時間半くらいはかかるが、今日も無事に帰着できそうだ・・・。