TVで”ヨーロッパアルプス・鉄道の旅”という番組を見ていて、10年ほど前に行った旅行を懐かしく思い出した。
それはフランス⇒スイス⇒リヒテンシュタイン⇒ドイツと巡った旅で、鉄道はフランスとスイスで乗っただけだが、その時の脳裡に仕舞い込まれた光景記憶が、TVで流れる映像とオーバーラップして妙な郷愁感を伴って蘇った。
この時、フランスとドイツは2度目だったがスイスとリヒテンシュタインは初めて。
山好きの小生は、スイスアルプスの高峰を見るのが愉しみで、中でも登山鉄道に乗って訪れる”ユングフラウ山群”を真近で堪能するのをこの旅一番の眼玉にしていた。
ところが、フランスでは好天に恵まれたのに、スイスに入った途端に天気は下り坂へと急変。
インターラーケンまでは持った曇り空も、グリンデルワルト⇒クライネシャイデックと登山鉄道を乗り継ぐ頃には、低く垂れこめた雲間から雨粒が落ちてくる始末。
御蔭で、車窓から仰ぎ見る筈のアイガー北壁は厚い雲に閉ざされ、ユングフラウヨッホから眺望出来る筈のメンヒ・アレッチ氷河・ユングフラウの雄大な景観も、濃いガスの彼方に沈んで観ることは叶わなかった。
景色を観に来てその景色が悪天で観られないほど不運なことは無いが、こればっかりは”天の采配”で如何ともし難く、負け惜しみ的に次の機会にと再訪を誓ってその場を後にしたが、未だにそれが実現できてないのは吾がことながら残念この上ない・・・。
さて今日は、庭に咲くアジサイを眺めていて「アジサイの名所巡りでもしてみるか」と俄かに思い立ったので、チョット強めの風が吹く天候ではあるが出かけることにした。(気象情報で風向き等を確認すると、行先辺りは風が弱いと表示されていて少し安堵、今はそれを信じるしかないからなぁ)
まず向かったのは御裳神社(一宮市)で、居宅からは15kmほどなので、足慣らしには丁度良い距離。
しかし、いつもの様に遅い出発(10時近く)なので、快晴の空から降り注ぐ陽光で気温は上昇気味、それにペダルを漕ぐ脚の内部発熱も加わるので、濃尾大橋で木曽川を渡る頃には額に汗が滲んできた。
だがそれもまんざら悪いことではない。
川面を渡る涼風が実に心地良く感じられ、また眼に入る景色も何故か新鮮な気がして、それらを味わう様にスピードを緩めて束の間の爽快感を愉しんだ。
御裳神社のアジサイは既に開花の盛りを過ぎていたが、見物客の方は小生の予想を超えるほども居てチョットびっくり。
「まぁこれが名所の名所たる所以だろう」と妙に納得?したが、ゆっくりと花を愛でる気分にもならなかったので、足早にグルっと境内を巡っただけで、次の目的地へ向かうことにした。
ここから性海寺(稲沢市)へ向かうには東海道新幹線の高架下道を行くのがベスト。
主要道じゃないので車の通行が少なく距離も最短、轟音を響かせて頻繁に通過する高速列車を見送るのも結構愉しい。
ドクターイエローが来ることを密かに期待してみたが、当然の如くそれは無かった。(随分昔に岐阜羽島駅に停車してるのを1度だけ見たことがあるけど・・・)
ただ難点は信号交差点が結構多く、赤信号に捕まる頻度も多くなって走り続けられないこと。
短い距離間隔で信号があって、その都度停められると「おいおいどうなってんだ!」とイラつくが、これも自転車乗りの宿命?と諦めるしかないか・・・。
性海寺の門前には露店が出ており「見物客が多いか?」と危惧?したが、寺内の人影は思ったほどではなかった。
山門から公園⇒古墳跡へと続く遊歩道をゆっくりと巡りながら、様々に色付くアジサイを観て回った後は、東屋の木椅子に座してしばらく休憩。
樹陰のつくる閑静な雰囲気が辺りを包み、小生を静謐な気分に誘ってくれた。
性海寺を後にして清洲城へと向かう。(何のことは無い6kmほど走るだけ)
当初の予定には無かったが、小生はこれまでこの城を訪ねたことが無いので「チョット寄ってみるか」と興味本位に足を伸ばすことにした訳。
この一見松本城に似た(小生が勝手にそう思ってるだけ)城は、30数年前に新造された模擬天守で歴史的価値は全く無いが、それは一旦脇に置いてここを居城とした織田信長や、その死後に清須会議で覇権を争った柴田勝家・羽柴秀吉らの生き様に思いを馳せると、妙に感慨深いものが脳裡に去来する。
因みに小生は三英傑の中では徳川家康が好きだが、その家康も昔の清州城には深い関りがあったらしい・・・。
400年前の偉人達に思いを馳せて束の間遊んだ後は、新幹線沿いの道を稲沢まで戻り、そこからはr-130に走路をとって木曽川大堰へと向かう。
西に走るので向かい風だが、予報で確認した通りの微風(1~1.5m/s?)なので大して支障にならないのは正直助かる。
気分良く快走して祖父江まで来た時、前方視線の片隅に”黄色いもの”が映ったので首を路傍に振って確認すると、それは何とヒマワリだった。
「もうヒマワリ?」小さな畑だが、その健康そう(image)な花弁を見ていると、好きな夏が直ぐ近くまで来ていると思えて何だか嬉しくなった。
木曽川大堰から南濃大橋(長良川)と渡って向かったのは安八の本戸輪中堤。
ここの”アジサイ路”は、まだ名所認定?されてないが、小生が思うに「この辺りで一番アジサイを観るのに好い場所」なので、今日の ”名所巡り” の有終美を飾るべく訪ねた 次第。
堤両側の桜並木の下に約6,000本のアジサイが植生しており、柔らかな木洩れ陽を受けて簡素に輝いている、ここのアジサイの風情と雰囲気が小生は好きだ。
4~5分寛いだ後「さて帰ろうか」と路傍に置かれた丸太椅子から腰を上げる。
ここから居宅までは15kmも無いのでゆっくり走っても1時間とはかからない。
「急ぐ必要はないぞ~」と暗黙の了解を自分からとった・・・。