風を道連れに

☆あるボッチローディーの独り言☆

山襞に誘われて

 

日中に遠目で見た時は蜘蛛と思った虫が、夜になってまた足元に現れたのでよく見ると小さな蟋蟀だった。

そのままにして家の中で鳴かせてみるか?と思ったが、それはやっぱり蟋蟀には不本意と考え直して、手でそっと掬って庭へと逃がしてやった。

まだ日中は35℃超えの猛暑が続くが、陽が落ちて数時間もすると30℃を下回って随分と過ごし易くなってきた今日この頃である。

9月を迎えれば更に涼しくなることは間違いない。

あの蟋蟀は、秋の夜長に「リリリリ・・・」と涼やかな音を奏でて小生の耳へと届けてくれるだろうか?

" 酔うてこほろぎと寝てゐいたよ " と山頭火は詠ったが、それを真似する感じで束の間うたた寝してみたいなぁと、心密かに思っている・・・。

羽根を擦って音を奏でるのはオスだけらしい(これはメス)

さて今日は久々のライドということで、鈍った身体に合わせて70kmばかりをサクッと走って”やった感”を演出(誰に?)することにした。

とは言うものの、この70kmの走路が全く脳裡に浮かんでこないので、仕方無くまずは西の方角へとバイクを走らせる。

街中を抜けて少し視界が開ける処まで来ると、正面遠くに見える伊吹山がやけに綺麗な表情で迫ってきた。

昨夜の雨が大気中の塵を落としたからだろう、普段は朧な山襞の数々がクッキリと細部まで見えるのはちょっと感動的(小生は些細なことで感動する性質)ですらある。

「よしあの麓まで行くか」と安直に決めて、クランクを廻す脚に力を込めた。

遠く伊吹山を背にした墨俣城

長良川を越えて墨俣から大垣へと向かう。

あまり走りたくない大垣市街は北か南へ迂回するのが通例で、今日は南ルートを選択。

このルートは、1ヶ月半前に訪ねてがっかりした(土塊から芽が出てるだけ)ヒマワリ畑近くを通るので、捲土重来とばかりに黄色に埋めつくされた絶景を見るべく向かったのだが、勇躍着いたそこには、首を傾げて重くうな垂れたヒマワリが、辺り一面に茫洋と拡がっているのだった。

「遅かったかぁ・・・」この感じだとお盆過ぎくらいが丁度見頃だった思うが、あの頃は何かと有ってライドには出られなかったので仕方ない。

つくづく縁の無いヒマワリ畑だが「また来年だな」と未練心に踏ん切りをつけて先へと進むことにした。

↑    こんなヒマワリ畑を期待したが現実はこれ  ↑

大垣の南外縁を廻って養老との境辺りまで来ると、遠くに見えていた伊吹山も随分近くなって、走ってきた距離が感覚的に実感される。

麓の関ヶ原までは牧田経由であと10kmほどだが、先刻から身体に軽い疲労感があってペダルを踏む脚に心もち力も入らないので、この先の養老SAプラットパークで休憩することにした。

多分10日ほど前に罹患した風邪(検査でコロナじゃ無いのは確認)が完治してないからだろうが、なんともはや軽い風邪をいつまでも曳づるなんて、全くもって歳はとりたくないもんだ。

丸みを帯びて見える伊吹山の山容      木洩れ陽の休憩場所でひと休み

休憩で疲労感は若干和らいだものの、どうも関ヶ原へと向かう気力が湧いてこない。

こんな時ボッチローディーは勝手気儘で、早速心の声に従順に応じて行先変更を決めるのに躊躇は無く「取り敢えず牧田までは行き、そこから養老山地の縁を南へ走って養老⇒輪之内⇒安八と辿る・・・」と新たな走路を頭に描くのに1分とはかからなかった。

 

狭い路側帯の走行を強いられる牧田までの2kmを急いで駆け抜けると、その先は養老山麓の心安らぐ細道をのんびりと走る。

時刻は正午ちょっと過ぎで、上天から降り注ぐ陽光で外気温はうなぎ登りだが、バイクで走る小生の体感温度はそれ程でも無い。

給水ボトルは飲み干したので、どこかの自販機で飲み物を手当する必要はあるが、まだ喉は乾いてないので、500mlを1本でいいかなと安易に皮算用した。

養老山地の縁を走って養老へと向かう

養老からは牧田川右岸堤防道路に出て東へと向かう。

車の交通量が少ない走り易い道で、南東からの弱風に抗いながらペダルを漕いでいると、突然(全くNo careだった)後から来た3人組のローディーに抜かれた。

「おっと速いぞ」みるみる遠ざかる後姿に、小生のサイコンのスピード表示を確認すると26km/hr。

と云うことは彼らは35~6km/hrで飛ばしているかも知れない?

彼我の脚力の差は歴然なので、無理して追いすがろうと露ほども思わないが「トレインで走るのは楽なんだろうなぁ」とボッチ走りの小生は多少羨ましく思ったのは確か。

とは言え、ボッチの自由を手放してまで誰かと一緒に走ろうとは、決して思わないのが小生の偏屈さの証明でもある・・・。

 

福束大橋で揖斐川を渡り、堤防道路を安八へと走る。

視界が大きく開け大気も澄んでいるので、濃尾平野の北端を区切る青山の連なりがよく見えて気分が上がる道だ。

ここから見ると金華山の下に拡がる岐阜市街も近く感じるが、まだまだそこまでは遠く小1時間は走る必要がある。

この夏休みに遊びに来た小学3年生の孫が”距離と道のりの違い”を得意げ?に教えてくれたが、それを俄かに想い出して独り静かに笑った。

青い空と白い雲、そして緑の大地が視界一杯に拡がる・・・

墨俣まで戻ってきた。

長良大橋を渡って、左岸河川敷の河川管理道路を少し走れば岐阜市街。

出がけには70kmほどを走るつもりでいたが、結果は60kmちょっとで終わりそう。

まぁ10km弱の違いは”老体にムチ打った”その事実でご勘弁願おう・・・。

長良大橋を渡れば岐阜市街はもう近い