寝起きのボーっとした気分で朝食中に、掛り付けの泌尿科の先生から電話があった。
先日、採血して調べたPSA(前立腺腫瘍マーカー)の値が前回より悪くなっていると 言う。
「やっぱりな、そうなると思った」定期的にPSA検査をしているが、バイクに乗った 翌日に採血すると決まってPSA値が上昇するのだ。
まぁそうは言っても前立腺癌に罹るのはやっぱり嫌、前に精密検査を受けたのは3年 ほど前だから、そろそろ検査の頃合いでもある。
明日にでも泌尿器科に行って精密検査受診の件を相談することに決めた。
今日は気温も10℃くらいまで上がるとの予報なのでライドに出掛けない手は無い。
「たまには木曽川サイクリングロードをのんびりと走ってみるか」と逡巡なく決めて 準備に取り掛かった。
居宅を出て走りながら「今日はどの橋を渡るかな?」と考える。
木曽川にかかる橋は上流から木曽川橋、尾濃大橋、濃尾大橋と3つある。
近いのは木曽川橋だが、心と体は濃尾大橋へと遠回りするのを要求しており、まずは ハンドルをその方向へと切る。
こんな時に濃尾大橋を選択するには訳がある。
木曽川橋を渡るより10kmほど余分に走れることもあるが、濃尾大橋を渡って上流に 走った辺りの堤防道路から見る風景が好きなこともある。
冬の空気の澄んだ日は、濃尾平野を西から東にかけて囲む青い山並みが見渡せ、それらを遠く眺めながら走ると爽快な気分になる。
それにしても今日は陽気が良いせいか、サイクリングロードと併設された遊歩道を歩いている人が多い。
大概の歩行者はバイクが近付くと音で気付くが、そうでない歩行者も少なからず居る。
危ないのはバイクに気付かず直前に横に動く人で、これまでも何度か急ブレーキで衝突を回避したことがある。
「声掛けと減速が必要だな」と呟いて自分に言い聞かせた。
尾濃大橋の下を抜けて玉ノ井緑地公園を過ぎると、サイクリングロードは一旦途切れ、その先のサイクリングロードまでは堤防道路を走る。
堤防道路区間は僅か1.5kmほどの距離しかないが、車が通る舗装の悪い道で、ここまでの快適な走りを中断されるのは小生にとってかなりストレスだ。
昨年から、この堤防道路の河川敷側で灌木の伐開がおこなわれているので、ひょっと するとサイクリングロード敷設もあるんじゃないかと、期待を込めて見ているがさて どうなることか・・・。
木曽川橋を過ぎると暫くのあいだ川沿いをいくので、時折川の流れに視線を投げながら138タワーまで快調に走る。
木曽川は長野県(木曽郡木祖村)を源流に岐阜、愛知、三重と流れて伊勢湾にそそぐ
延長229kmの大河で、下流域のこの辺りでは水質も悪くなっているが、冬は川の流れ が清澄になるので、青く光りながら流れいく様を眺めていると清々しい気持ちになる。
居宅を出てから1時間半ほど走り続けてきたので、サイコンの走行距離を確認すると25kmチョットでたいして走ってない。
まぁ、今日はのんびり走るのがルールだから、その意味では合格だ。
「そろそろ休憩の頃合いか」と思いながら、普段スルーする河田橋下の休憩エリアを 通り過ぎた時、視界の片隅に何かキラリと光るものを認めた。
「ぅん、あれはサイクルラックじゃ?」気になったので戻って確かめると間違いなく サイクルラックだった。
「いつ設置したんだろう?」昨年秋ごろまでは無かったのでそれ以降に違いない。
ここで休憩すると急遽決め、サイクルラックにバイクを預けてからベンチで物思いに ふける。
「設置したのは誰? 公園の施設整備の一環なら自治体? 費用は工事費込みで10万円 もあれば? 他の休憩エリアにも設置されるかなぁ?・・・」
アレコレ勝手に類推しながら15分余りを過ごした。
のんびり走りゆっくり休憩した所為か、扶桑緑地公園の折り返しで時刻は正午を過ぎ てしまった。
「少しスピードUPするか」と呟いてペダルを踏む脚に力を込める。
スピードは27~28km/hr、風は微風ながらも向かい風で次第に息が上がって心拍数も 増えてくる。
「これじゃチョット持たないなぁ」と弱気に判断し、ギアを1段落として持続可能な スピードに抑えた。
一昨年から昨年にかけてのほゞ1年間バイクに乗らなかった影響で、かなり身体の運動機能が落ちてしまった。
以前は無理なく熟せたことが今出来ないのは、心肺機能や筋力が以前のレベルまで回復してないからだろう。
「ローラー台で鍛えるか」と自問した。
帰路は、往路をそのまま木曽川橋まで戻る心算で138タワーまで走ってきたが、右方向に観覧車を見て急に心変わりした。
「この先でアクア・トト方向へルートを変えよう」
別に観覧車に乗りたい訳では無く、単に往路とは違うルートをとることにしただけ。
多分、木曽川橋まで戻るルートの方が早く居宅に帰り着くが10分とは違わない。
「急ぐ必要も無いからね」と独り呟いた。
のんびりと木曾川サイクリングロードを走ってみたが、珠にはこんなライドも良い。
特に冬の少し暖かい日は、休憩場所のベンチに腰かけて、好きな曲でも聞きながら川面を眺めていたいものだ・・・。